【連載12】子どもの東洋医学「夜尿症(オネショ)」
はじめに
誰しも幼少期には経験している「オネショ」。
成長するにつれてなくなっていきますが、オネショを卒業する時期には個人差があります。
とくに、修学旅行など宿泊をともなうイベントの際には、オネショの不安が大きな課題になることがあります。
「夜尿症」とは
「5歳以上で1ヶ月に1回以上、夜寝ている間に尿を漏らしてしまうのが3ヵ月以上続く」ことを、「夜尿症」と言います。
原因としては、
・尿を溜めておく膀胱の容量が少ない
・夜の尿量を調整するホルモンの分泌が少ない
・尿が膀胱に溜まっても目が覚めない
といったことなどが考えられます。
子どもさんは、膀胱やホルモン分泌・神経伝達などの機能が未熟であるため、ある程度の成長を待つ必要もあります。
そのほかにも、
・昼間の水分摂取・排尿が十分ではない
・夕方以降の水分摂取が多い
・夜に塩分・糖分・タンパク質・カフェインなどを摂り過ぎている(いずれも尿に影響しやすい)
・オナカが冷えている
・ストレス
・便秘(便が膀胱を圧迫してしまう)
といったことも原因になりえます。
東洋医学的なみかた
東洋医学的なみかたでは、「夜尿症」をいくつかのタイプに分けて考えることがあります。
①カラダが弱い・発達がゆっくりタイプ
特徴:オネショの回数が多い、冷えるとすぐオネショする、手足が冷えている、寒がり、息切れしやすい
ご家庭でのケア:お腹・腰・手足を温めてあげる、カラダをしっかり休ませてあげる
②呼吸器・胃腸が弱いタイプ
特徴:オネショの回数・量は多くはない、風邪をひきやすい、食欲がない
ご家庭でのケア:よく噛んで食べるようにうながす、乳製品・甘いもの・油っぽいものは控えめに、お腹・背中を温めてあげる
③ストレス・熱がこもっているタイプ
特徴:尿が濃く臭いが強い、手足がほてる、顔が赤い、歯ぎしりする
ご家庭でのケア:ストレスを溜めこまないように発散させてあげる(スポーツをする、散歩をする、趣味に没頭するなど)、お風呂の温度はぬるめに
・・・など。
※ここに紹介したタイプは一例です。
鍼灸であれば、
①カラダが弱い・発達がゆっくりタイプ は、
成長を司る「腎」を補ったり、オシッコを留める働きをうながす「気」を補ったりします。
②呼吸器・胃腸が弱いタイプ は、
胃腸の働きを司る「脾」や、「脾」とともに体内の水分を調整する「肺」を補います。
③ストレス・熱がこもっているタイプ は、
ストレスで滞りやすい「肝」の流れをよくしたり、こもった熱をとったりします。
便秘がオネショの原因になることもありますので、お腹の動きをうながし便通を良くする施術を行う場合もあります。
※鍼灸の考え方や施術は、流派や施術者によって多様性があります。
また、ご家庭では、
・昼間に水分をしっかり摂りオシッコを出す
・夕方以降の水分摂取を控えめにする
・夕食時や夕食後に、塩分・糖分・タンパク質・カフェインを摂り過ぎないようにする
といった、生活習慣の改善も重要です。
それとともに、
「ストレスを溜めていないか」「トイレに対して苦手意識がないか」「何らかの理由によりトイレを我慢していないか」など、
親御さんとお子さんのコミュニケーションをしっかりとることも大切です。
一旦オネショを卒業しても、
弟妹の誕生や、何らかのショックな体験、環境の変化、などによって再発する場合もあります。
そういったときには、お子さんの変化に意識を向けてあげてください。
おわりに
オネショの卒業が後になるにつれ、子どもさんの自尊心に対しても影響が大きくなっていきます。
オランダのある研究では、
子どもさんが受ける「オネショ」による精神的ショックは、
「保護者の離別」「保護者の争い」についで3位にランクインする、という結果が出たそうです。
これは、「いじめ」や「仲間はずれ」よりも上位であり、
オネショがいかに子どもさんのココロに大きな影響を与えるかを表しています。
オネショの対策や片づけをしたり、安心して眠れなくなったりする親御さんの負担もかなりのものです。
また、精神疾患、注意欠陥・多動症(ADHD)、自閉症スペクトラム(ASD)、知的能力障がい(ID)などの特性がある場合は、夜尿症が併存しやすいと言われています。
それぞれの治療を優先して行いながら、夜尿の治療も行います。
オネショを卒業するためには、成功と失敗を繰り返しながら、根気と時間が必要な場合もあります。
ご家庭でのケア・お医者さんでの治療のほか、鍼灸や漢方もオネショ卒業をサポートすることができます。
お子さんの成長の過程で出会う様々な課題。
そのときは本当に大変ですが、
それを乗り越える体験の積み重ねが、お子さんのココロを大きく成長させてくれますし、親御さんの喜びになっていくことと思います。
お子さんがオネショを卒業して、自信をもって色々なことに挑戦していけるよう、ご家庭だけで悩まずにぜひ相談してみてくださいね。
参考:
日本夜尿症学会編集.「夜尿症診療ガイドライン 2021」.2021年.診断と治療社.
日本泌尿器科学会.「『おねしょ』(夜尿症)が治らない」
医療福祉センターさくら 院長・服部益治 監修.「おねしょ卒業!プロジェクト」.フェリング・ファーマ株式会社.