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【連載2】“うつ”について〜東洋医学的なみかた〜

京都・出町柳のERP下鴨南治療院の鍼灸師・菅原と申します。

“うつ病”は、「ココロの風邪」と呼ばれることもあります。
それだけ身近で誰でもなりうる病気だからこそ、
軽い「風邪」のうちに対処できたら、ココロに「風邪」をひかないように予防できたら、とも思います。

今回は、“うつ”について、東洋医学的な観点をふまえお話をしていきたいと思います。

はじめに

“うつ病”は100人に6人がかかるといわれています。
この統計は病院で診断を受けている人数をもとにした厚生労働省のデータですので、実際にはもっとたくさんの人がなっている可能性があります。

「ココロの風邪」ともいわれる“うつ病”ですが、
実際は風邪よりも重篤で、生活に支障をきたしたり自死にいたったりすることもある怖い病気でもあります。

“うつ病”とは

日常生活や様々な人生経験のなかで、
憂うつになったり、気分が落ち込んだり、やる気がなくなったり、不安に襲われたり…
といった感情の波は誰でも経験するものです。

しかし、“うつ病”の場合は、
気分の落ち込みなどのココロの症状が非常に激しく、
「なぜ気分が落ち込んでいるのか」というハッキリとした原因が思い当たらないこともあります。

また、とにかくカラダがだるくて起き上がれない、夜眠れない、食欲がない…
などのカラダの症状が出る場合もあります。

結果的に毎日の生活に大きな支障をきたすことにもなり、治療が必要になります。

“うつ病”になるメカニズムは、
西洋医学的にはまだはっきりとはわかっていないようです。
ストレスや過労、環境の変化でなることも多く、
まじめ・完璧主義・自分に厳しい・責任感がある、といった性格の人はなりやすいといわれています。

受験や仕事の失敗、失恋、離婚、親しい人やペットとのお別れなどの悲しい出来事だけでなく、
進学、就職、昇進、結婚、妊娠、出産、子離れなどの嬉しい出来事が引き金となることもあります。

ココロとカラダのバランスの乱れが“病”につながります

鍼灸では、病院で診断される病名に対して施術を行うというよりは、
その患者さんが現わしている症状から、ココロとカラダのバランスの乱れやその原因をさぐり施術をしていきます。

ココロとカラダのバランスをみる際に重要なことがらのうち、
「気・血・精」といった生理物質や、
「臓・腑」といった生理機能があります。

〈東洋医学でバランスをみる際に重要なことがら〉

  • 生理物質

気・血・精 など

「気・血・精」などの生理物質は、細胞や臓器を動かすエネルギー、
西洋医学でいう「血液」などの液体成分や、エネルギー源となるガソリンのようなもののことなどを指します。

それぞれの生理物質が必要なだけあり、滞ることなく全身を巡っているとココロとカラダは健やかです。
それらが足りなくなったり、増えすぎたり、滞ったり、冷えたり、熱をもったりすることにより様々な不調の原因になります。

  • 生理機能

臓(肝・心・脾・肺・腎)
腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱) など

臓「肝・心・脾・肺・腎」、腑「胆・小腸・胃・大腸・膀胱」などの生理機能は、
西洋医学でいう臓器の働きに似ていますがまったく同じではありません。

それぞれの臓腑が互いに関係しあいながらココロやカラダ全体を動かしています。
臓腑それぞれが正常に働いていれば問題ありませんが、
どこかが疲れたり、暴走したり、適切に働けなくなると、ココロとカラダに不調として現れてきます。

東洋医学でみる“うつ”

“うつ”になるのは、頑張り屋さんや繊細な人が多いように感じます。
毎日休みなく忙しく働いている、新しい事業を立ち上げた、家事や育児の手を抜けない、部活動や勉強に熱心に取り組んでいる…

また、人の気持ちを痛いほど察してしまう、感性が敏感でふとしたことにも刺激を受けやすい、ココロ根が優しくて悲しいニュースにも同情してしまう…
など。

人間が動くには当然ながらエネルギーを消耗します。
このエネルギーは、おおまかには東洋医学でいう「気・血・精」などの生理物質に該当します。
カラダを動かすことはもちろん、ココロの動きでもエネルギーを消耗します。
たくさんココロとカラダを使うと(頭脳労働も含みます)、「気・血・精」が少なくなってきます。

少なくなったものは、食事や休養で補充することができます。
しかし、補充することなく消耗し続けたら、エネルギーは枯渇してしまいますね。
ガソリンを入れなければ車が走れなくなってしまうのと同じです。

また、ココロとカラダを動かす生理機能「臓・腑」が、
オーバーワークだったり、ダメージを受けたりすることによっても、正常に働けなくなってしまいます。
機械の一部が故障するとうまく動かなくなってしまう状態と似ています。
それがココロとカラダに不調として現れてきます。

たとえば、
気持ちが落ち込む、イライラする、やる気がでない、
不安になる、全身がだるい、朝起きられない、
呼吸が浅くなる、動悸がする、眠れない、食欲がない、ものごとが覚えられなくなる…など

西洋医学で診断される“うつ病”の症状は、
東洋医学においては、こういった生理物質の消耗や生理機能の不具合からも分析できます。

“うつ”との付き合い方

西洋医学では休養・薬物療法・精神療法が“うつ病”の治療の基本です。
最近は栄養療法・運動療法などを加えた治療をされる病院もあるようです。

東洋医学でもそれは似ています。

まず休養。
そして、エネルギーを補充すること。
そのうえで、心理的な配慮も必要です。

そのなかに栄養・運動といった要素も含まれています。

①休養。

エネルギーが枯渇している、生理機能が疲れてしまっている、
そんな状態をまずは休ませてあげることが大切です。

人間の体は、自分で自分を治す「自然治癒力」をもっています。
働き続けていたら自分を治す余裕がありません。
しっかりココロとカラダを休める時間を確保しましょう。

②エネルギーの補充。

とくに「脾・胃」つまり胃腸の働きを助けて、
食べ物から「気・血・精」などのエネルギーをしっかり作り出せるようにすることが重要です。

また、作り出したエネルギーを全身に巡らせる・運用することが必要ですので、
他の臓腑の調子を整えることも必要です。

③心理的なこと。

これは、「気」をこれ以上過剰に消耗しないようにし、滞らないように流れを良くすることとにも繋がります。
怒りや不安などの感情はエネルギーを消耗します。
また、思い悩むことで「気」の流れが悪くなります。

「今はしっかり休む時」と割り切って、
ココロをツラい気持ちから解放してあげましょう。

また、じっとしているとどうしても悲観的になってしまうこともあるでしょう。
そんな時は、軽くカラダを動かしたり、温めたりして「気」を巡らせることをしてみましょう。

ただし、「気」自体が少なくなっていると、
水が枯れてしまいそうな小川のように、うまく流れてくれませんし、しっかりと潤すこともできません。
散歩をしようとしても、ココロもカラダも動かない、そんな状態です。
まずは十分な休養と栄養を摂って、「気」の量自体を増やしてあげることが大切になってきます。

鍼灸のアプローチ

臓腑の不調を整えたり、生理物質が補充されることを助けたり流れを良くしたり…
といったことを鍼やお灸を使っておこないます。

また、鍼やお灸をすることで、
血流改善や鎮静作用も期待できますので、ココロとカラダが緩む助けになります。

「自然治癒力が増す」などと言われることもありますが、
患者さん自身が元気になるチカラを応援します。

カラダが冷えている場合には、
お灸などで温めることで「気・血」の流れを良くし臓腑の働きを助けてくれます。
セルフケアでも「温めること」を取り入れていただくと良いこともあります。

ただし、「熱」がこもってバランスを崩している場合には、
温めないほうが良いときもありますので注意が必要です。

不足しているか、過剰か、滞っているか、冷えているか、熱がこもっているか…など、
そういったことを見極めながら施術を進めていきます。
(※施術に用いる理論や手法は、流派や施術者によって同様ではない場合があります。)

自宅でできるケア・“うつ”の予防法

①睡眠をしっかりとる

理想は日付が変わる前に寝て、朝は遅い時間まで寝ずに起きる。
昼夜逆転しないように注意しましょう。
夜に睡眠がとれないと「気・血・精」が養われにくいほか、臓腑の働きもバランスを崩してしまいます。

②規則正しい生活リズムをつくる

決まった時間に寝て起きる・食事をする、などの基本的な生活リズムを保てるようにしましょう。
臓腑にも時間帯に沿った働きのリズムがあります。
規則正しい生活は、臓腑が正常に働けることをサポートします。

③思い悩みすぎない

思い悩み過ぎることは「気」の流れを滞らせ、とくに「脾」の機能も低下させます。
好きなことをしたり、深呼吸や散歩をしたりして、「気」の流れを良くしましょう。

④お腹・背中・手・足を温める

冷えている場合は、温めることで気持ちが落ち着きやすくなります。
また、「気・血」も流れやすくなります。
交感神経優位になりがちで手足が冷える人には、温冷浴(お湯と水に交互に浸ける)もオススメです。

⑤深呼吸をする

深い呼吸をすることで自律神経が整いやすくなりますし、ココロも落ち着きます。
「肺」の働きを助け、「気」の巡りを良くしてくれます。

⑥散歩やストレッチなどの軽い運動をする

「気・血」の流れを良くし、「肝」のスムーズな働きを促してくれます。
ただし、へとへとになるほどの運動はかえって「気・血・精」を消耗してしまいます。
カラダが疲れない程度の心地よい運動をしましょう。

⑦よく噛んで食べる

噛むことでココロが落ち着き、食べ物の消化がしやすくなります。
よく噛まずに飲み込んでしまうと「脾・胃」に負担をかけてしまい、せっかく摂った栄養素を十分に吸収できなくなります。
また、「脾・胃」が弱ると思い悩みやすくなります。

⑧消化に良い、滋養のある食事をする

旬のもの、和食がオススメです。

“うつ病”の方は、タンパク質・ビタミンB群・鉄・亜鉛が不足しがちです。
オメガ3系と呼ばれる青魚やナッツなどに多く含まれる油も積極的に適量を摂りましょう。

⑨砂糖を控える

砂糖はストレス解消のメリット以上にココロとカラダに悪影響を与えます。
砂糖を摂ることで「脾胃」にも負担がかかり、気分や体調の乱高下が激しくなります。

甘いものが欲しくなった場合は、
果物・ドライフルーツ・ほしいも・甘栗などの自然な甘さのものを食べるようにしてみましょう。
ただし、食べ過ぎは禁物です。

⑩精白した小麦製品を控える

小麦製品に含まれるグルテンが腸にダメージを与えることがあります。

腸は“うつ病”の人に不足しがちな“幸せホルモン”「セロトニン」を分泌するのに重要な役割をしています。
腸に負担をかけないためにも、小麦製品よりなるべくお米を選ぶようにしましょう。
精白小麦は血糖値を急激に上げやすいため、小麦製品が食べたいときは、全粒粉・ライ麦などを使ったものを選びましょう。

(11)白米より雑穀米・胚芽米・玄米を食べる

…白米は代謝に必要なビタミン・ミネラルがそぎ落とされており、消化する際に体内のビタミン・ミネラルを消費してしまうほか、血糖値も上がりやすくなります。雑穀米・胚芽米・玄米など、“うつ”に有効なビタミン・ミネラルも一緒に摂れるものを選びましょう。ただし、「脾・胃」が弱っていると玄米は消化しにくい場合があります。しっかりよく噛んで食べるか、雑穀米・胚芽米・発酵玄米などを体調に合わせて選択しましょう。

(12)食べ過ぎず、腹八分目

せっかく栄養を摂って元気になろうとしても、過食は「脾・胃」に負担をかけてしまいます。
また、食べ過ぎると体の中に病理産物である「湿」や「痰」が生まれ、「気」の流れを悪くしてしまいます。

“うつ”と不眠

“うつ”の改善には睡眠がとても大事です。
不眠症状のある人は“うつ病”を発症する可能性がそうではない人に比べ高くなるという研究もあり、
また、不眠は“うつ病”を悪化させたり再発の要因になったりすることもあります。

一方で、“うつ病”の症状として「不眠」を訴える人は多く、
「睡眠をとることが大事」とわかっていても「眠れないこと」自体がつらい場合もあります。

不眠を改善するには、

・睡眠を妨げるものを避ける
・生活リズムの改善
・自律神経を整えること

などが大切です。

また、胃腸が弱ると睡眠を促すホルモン「メラトニン」を体内で上手く作れなくなるため、
胃腸(「脾胃」)を整えることも必要になってきます。

「眠り」のためにできること

睡眠を妨げるものを避ける

・コーヒーなどのカフェインを控える
・夕食に香辛料などの刺激物は控える
・寝る前のアルコールは控える
・テレビ・パソコン・スマートフォンなどを寝る直前まで見ない
・寝室を極端に寒い・暑い環境にしない
・日頃からおなかを冷やさない(おなかを冷やしすぎると「脾胃」の力が低下します)

睡眠を促すリズムをつくる

・朝日を浴びる
(天候の悪い日は人工の照明でもOK)
・朝は眠くても同じ時間に起きる
(睡眠リズムをつくるには、「寝る時間」以上に「起きる時間」が重要)
・日中に適度に体を動かす
・熱すぎないお風呂にゆったり浸かる
(湯船に浸かると疲れてしまう場合は、無理に長湯しない)
・昼寝は長時間しない
・寝室をリラックスできる環境に整える(寝具・照明・音楽など)

眠れないときにできるセルフケア

①手・足を温める
手足が温まると、手足から熱を発散して脳の深部温度を下げ、眠りやすくなります。

②ゆっくり深い呼吸をする
おへその下に手を置いて、おなかが上下するようにゆっくり深い呼吸をすることで高ぶった神経が落ち着いてきます。
いろいろな考えが頭に浮かぶ場合は、ただ呼吸の数を数えるだけにします。

③手足の爪の横を揉む
「井穴(せいけつ)」と呼ばれる自律神経を整えてくれるツボがあります。
痛気持ち良いくらいの圧で揉みます。

ツボ「井穴(せいけつ)」

指の爪の横にあるツボですが、
爪の左右ともにある指と、左右どちらかにある指・どちらにもない指があります。
(ちなみに「井穴」はある意味での総称で、それぞれのツボに固有の名前があります。)

セルフケアで揉んでいただく際には特に気にせずに、
どの指も爪の横を揉んでいただくとよいと思います。

④頭のツボをマッサージする
頭頂部には、「百会(ひゃくえ)」「四神総(ししんそう)」 など、
精神安定に関係の深いツボがあります。
頭皮全体をほぐすように、気持ち良いくらいの軽い圧でマッサージします。

ツボ「百会(ひゃくえ)」「四神聡(ししんそう)」

厳密なツボの取り方はありますが、セルフケアでマッサージしていただくのであれば、大体で良いです。
頭頂部をはじめとした頭皮をマッサージしていただくとリラックスします。

⑤アロマオイルを使う
自分が心地よいと感じる香りを芳香器で漂わせる、アロマオイルをタオルやティッシュに垂らし枕元に置く、など。

★リラックス・安心作用のある香り:
マジョラム、バニラ、ゼラニウム、ラベンダーなど
(血圧が低い人は、ラベンダーを使うと朝が起きにくくなることもあるため注意)

★呼吸を深くしてくれる香り:
フランキンセンス、サンダルウッドなど
※ローズマリー、ペパーミントなどのスッキリした香りは
覚醒作用があるため、就寝前は避けます

「ココロの風邪」をひかないために

先に上げた〈自宅でできるケア・“うつ”の予防法〉や〈「眠り」のためにできること〉は、
“うつ病”に限らずそのまま日頃の養生法になります。

「風邪」をひかない元気なカラダを養うように、
日ごろから「気・血・精」を適切に補い、「臓腑」の働きをスムーズにすることで、ココロとカラダの病にかかりにくくなります。

また、気持ちが落ち込みやすくなってきた、ハードワークが続いている、眠りにくくなってきた、胃腸の調子が悪くなってきた…などの変化に気づき、
早めに対処することができれば重い“うつ病”になることを防げるかもしれません。

もし“うつ病”になってしまったら、それはココロとカラダからのSOSです。
病院で適切な治療を受けるとともに、疲れ果てたココロとカラダを大切にいたわってあげてください。
鍼灸やマッサージ、アロマテラピーなど、体調を整えたりリラックスできたりする施術が、その助けになれることもあります。

そして、一人で悩まないことも大切です。
「ちょっとおかしいな」と思ったとき、抱え込まずに周りの人に相談してみてくださいね。

参考サイト:
厚生労働省「知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス」

大塚製薬「こころの健康情報局 スマイルナビゲーター」

Profile
菅原 美幸
ライター 鍼灸師 at

学校法人森ノ宮医療学園
ERP下鴨南治療院 接骨・鍼灸
保有資格:鍼灸師、アロマセラピスト、健康美容食育士、ファスティングマイスター
中医学にもとづいた鍼灸施術、食養生などのアドバイスも行っています。

ERP下鴨南治療院 接骨・鍼灸
鍼灸部門では、お体の「鍼灸施術」、お顔の「美容鍼」、子どもさんの「小児鍼」、経絡を整える「アロマオイルトリートメント」を行っています。
また、接骨部門ではスポーツの怪我のケアやトレーニング指導も行っています。

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Profile
運営者/編集者/ライター at

株式会社みのりの森 代表取締役
NPO Reframe 代表理事
凸凹じぶんなび とことこ 製作者/運営者/編集長/ライター
発達障がい専門誌きらり。 発行者/編集長/ライター
発達障害(ASD/ADHD)当事者
双極性障害当事者
発達障害の支援を中心に、会社を経営。
NPOでは不登校、発達障害、HSPなどの生きづらさを抱えた子どもと若者の居場所づくりをしている。

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