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【連載5】東洋医学的 季節に合った養生の方法

はじめに

今回は、東洋医学の観点から“季節の養生”についてお話していきたいと思います。

東洋医学では「人間も大自然の一部である」と捉えています。
自然の一部である人間は、“自然の流れにあった生き方をすることで病気になりにくく健やかに暮らせる”と考えます。

季節の養生

季節の区分

東洋医学で考える「四季」は、旧暦で考えます。
そのため、

春は2・3・4月
夏は5・6・7月
秋は8・9・10月
冬は11・12・1月

と分けられます。

また、各季節の変わり目には「土用」という時期があります。
カレンダーに書いてある
立春(2月4日頃)・立夏(5月5日頃)・立秋(8月7日頃)・立冬(11月7日頃)の前18日間が
「土用」にあたります。

ウナギを食べる夏の「土用」が良く知られていますが、季節ごとに年4回「土用」がおとずれます。
春夏秋冬の「四季」に、「土用」を加えて「五季」という考え方をします。

春の養生

春は日が長くなり、草木が芽吹く時期です。
人間もこの時期はだんだん活動的になり、冬のあいだにカラダのなかにしまっておいたエネルギーを体中に行き渡らせ、熱を放出する「発散」の時期です。
春のポカポカした日差しが心地よく、寒いあいだは家の中にこもりがちだったけれど、なんだか出かけたくなったり、新しいことにチャレンジしてみたくなったりする季節ですね。

東洋医学の古典では、

「春は朝早く起き、ゆったりと歩き、のびやかに過ごしましょう」

と説いています。

この季節、もしエネルギーが全身に行き渡らなかったり、うまく発散したりすることができずにいると、体の中の「陽気」というエネルギーが体の上の方(頭など)に集まって滞りやすくなります。

そうすると、
イライラしやすくなる、のぼせ、不眠症、めまい、うつ病など
になりやすくなります。

また、「陽気」が目や鼻に集中すると、
花粉症やアレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎なども発症しやすくなります。

東洋医学でいう

「肝…自律神経などを調整する働き」

の症状がでやすい季節です。

春の「木の芽時(このめどき)」は
色々な症状がでやすい、と昔から言われます。
この時期は、冬に隠れていた症状が表に出てきやすくなる、ということとも関係しています。

夏の養生

春に芽生えた草木が一気に成長して茂る季節です。
人も、夏の太陽のエネルギーを全身に浴びて、活発にカラダを動かし大きく成長するのに適した季節です。

古典には

「夏は夜更かししてもよく、朝は早く起きる。暑さを嫌がらずエネルギーを発散する」

のが夏の養生として書かれています。

また、1年間たまった老廃物を汗とともにデトックスすることが健康につながります。

夏は暑さのためカラダの中に熱がこもりやすくなりますので、うまく発散して冷やすことが必要です。
もし熱が発散しきれずにカラダにこもってしまうと、熱中症や頭痛、鼻血などの出血症状が出やすくなります。

東洋医学でいう

「心(しん)…血管などに関わる働き」

の症状が出やすい季節です。

「冷やす・発散する」のに一番良いのは、汗をかくことです。
汗をかくことによりカラダのなかにこもった熱を発散し、カラダを自然に冷やすことができます。

「カラダを冷やすのには冷房」と思うかもしれませんが、
冷房にあたり続けて汗がかけなくなってしまうと、自分で熱を発散することが苦手になってしまいます。

冷房の温度を下げ過ぎない、比較的暑さが和らぐ朝晩に運動をする…など、適度に汗をかくようにしましょう。

また、アイスや氷たっぷりの飲み物など、冷たいものの摂り過ぎは、カラダを冷やし過ぎてしまいます。
胃腸を弱らせ、夏バテや秋の不調にもつながりますので要注意。
夏野菜など、自然にカラダを冷やしてくれる作用のあるものを摂るのがオススメです。

ただし、近年の温暖化で東洋医学の古典がつくられた時期とは大きく気候も変わっています。
暑さで体調をくずしやすい場合、気温が非常に高いときには適度に冷房を使用することは不可欠です。

秋の養生

夏の暑さも弱まり、夏場に成長して栄えた気を落ち着かせ、内に収めていく季節です。
夏場は汗とともにエネルギーを発散しますが、これから冬に向かうこの時期には、無駄なエネルギーを消耗しないよう内に収めていく準備の時期です。

古典では

「早寝早起きをして、エネルギーを消耗しすぎないよう動きすぎないようにしましょう」

とあります。

このエネルギーを「収める」ことがうまくいかないと、
東洋医学でいう

「肺…呼吸器全般の働き」

に負担をかけ、咳がでたりアレルギー性鼻炎の症状がでたりしやすくなります。

また、一年で最も清々しい季節ですが、
この時期に体調を崩す方は、夏の不養生が影響していることがあります。

夏にカラダにこもった熱が発散しきれていないと、熱が「肺」に影響して呼吸器系の症状がでることがあります。
また、夏の間に冷たいものの飲食をたくさんすることでカラダのなかに湿気が溜まっていると、水分代謝がうまくいかず怠さやムクミにつながります。

秋は、暑い季節から寒い季節へカラダをならす時期です。
軽くカラダを動かしたり、栄養を補給したりして体調を整えましょう。

冬の養生

冬は植物が枯れて、芽吹きの春に向けて土の中に養分をたくわえる季節です。
人間にとっても寒さでカラダを引きしめ、エネルギーが外に漏れないようにする時期です。

古典には

「夜は早く寝て、朝はゆっくり起きる」

とあり、エネルギーをたくわえる養生が示されています。

冬の身が引き締まるような“寒さ”は健康のためにも必要です。
ところが、ずっと暖房の効いた温かい部屋のなかにいると、毛穴が開いてエネルギーが漏れ出てしまい内に込めることができません。
適度に冬の冷気にあたることは大切です。

また、この時期は汗をかきすぎるとエネルギーを漏らしてしまいます。
玉のような汗の出る運動や温め“すぎ”は、東洋医学の養生としては好ましくありません。

とはいえ、
冷えからくる腰痛や膝痛などの症状がでやすい季節ですので、“適度に”温かくすることが必要です。

東洋医学的には

「腎…膝・腰、泌尿器系などに関わる働き」

の症状が出やすい時期です。

土用の養生

季節の変わり目のこの季節は、体調を崩しやすくなる方が多い時期です。
とくに湿度が高いときには、倦怠感、ムクミ、関節の痛み、胃腸の不調などが出やすくなります。

東洋医学でいう

「脾(ひ)…消化機能全般などの働き」

の症状がでやすい時期です。

土用は、前の季節から次の季節へ向けてカラダがチューニングをしていく時期です。
この季節は、胃腸の調子を整え、ほどよく運動をして、次の季節にスムーズに移行できるよう体調を整えます。

ウナギなどの栄養豊富なものを摂ることも大事ですが、
普段食べ過ぎの傾向がある方は胃腸を休めてリフレッシュさせてあげる、という養生も大切です。

また、油もの・甘いもの・乳製品・アルコール・食べ過ぎなどはカラダに湿気をためやすくします。
怠さ・ムクミ・胃腸の不調などを感じるときや、湿度が高い日に体調をくずしやすい方は、カラダに湿気をためやすい食材を控えましょう。

日本では昔から、この時期に“養生のお灸”をする風習もありました。
お灸をすることでカラダの調子を整えて、次の季節を元気に過ごすという、生活の中の知恵でした。

日々、鍼灸師として患者さんに接していると、
東洋医学の古典に描かれているように、
患者さんの不調に季節が反映されていることがよくわかります。

鍼灸では、患者さんのもともとの体質や傾向も鑑みながら、気候の変化に伴う不調にもあわせて施術を行います。
(鍼灸施術の理論や手法は、流派や鍼灸師によって多様性があります。)

食養生

食事は生命力の源です。
旬の野菜は、その季節のカラダに必要な栄養がギュッと詰まっており、季節に適したカラダのはたらきを助けてくれます。

また、老化やガンなど様々な不調の原因となる「活性酸素」というものがあります。
活性酸素はカラダを“サビ”させてしまう“酸化”の作用があります。

旬の野菜は野菜自体が元気で「抗酸化力」が強く、活性酸素の攻撃からカラダを守ってくれます。
現代は季節を問わず食材が手に入りますが、積極的に旬の食材を取り入れて養生しましょう。

春が旬の野菜

  • 特徴:上に伸びるもの、アクが強くほろ苦いもの
  • 作用:冬のあいだに溜め込んだものを解毒する

山菜(ぜんまい、わらび、ふきのとう、たけのこ…など)、菜の花、春菊、春キャベツ、アスパラガス など

夏が旬の野菜

  • 特徴:ぶら下がるもの、カラフルで水分の多いもの
  • 作用:カラダにこもった熱を冷やす、豊富なβカロチンが紫外線からカラダを守る

トマト、きゅうり、なす、スイカ、ゴーヤ など

秋が旬の野菜

  • 特徴:土の上かすぐ下にできるもの、ホクホクしてデンプン質の多いもの
  • 作用:消化を助け粘膜を守る、冬に向けてカラダを養う

里芋、レンコン、栗、玉ネギ、キノコ類 など

冬が旬の野菜

  • 特徴:土の中に実り硬いもの
  • 作用:カラダを温め、ウイルスなどからカラダを守る

大根、カブ、人参、ゴボウ、長ネギ など

土用の食べ物 ※季節を問わず

  • 作用:体内の湿気をさばいてくれる食材

ハト麦、海藻、豆類、大豆製品

おわりに

東洋医学の古典には
「日が昇るとともに起き、日が沈むとともに寝る」
という自然に沿った養生が説かれていますが、
現代生活の中でそれは難しいですね。

また、温暖化などの気候変動で、
東洋医学の古典がつくられた時期とは地球の環境も異なっています。

しかしながら、
「人間も自然の一部」という考え方から、
季節に合わせた過ごし方や食事をするということは、現代の私たちにとっても参考になることが多いと思います。

また、空の表情や道端の草木に季節の移ろいを感じることは、
普段ストレスフルな生活を送っている現代人にとって、一時のココロの栄養にもなるのではないでしょうか。

カラダとココロが元気で過ごすためのヒントが見つかれば幸いです。

Profile
菅原 美幸
ライター 鍼灸師 at ERP下鴨南治療院 接骨・鍼灸

学校法人森ノ宮医療学園
ERP下鴨南治療院 接骨・鍼灸
保有資格:鍼灸師、アロマセラピスト、健康美容食育士、ファスティングマイスター
一般社団法人 日本小児はり学会 会員
中医学にもとづいた鍼灸施術、食養生などのアドバイスも行っています。

ERP下鴨南治療院 接骨・鍼灸
鍼灸部門では、お体の「鍼灸施術」、お顔の「美容鍼」、子どもさんの「小児鍼」、経絡を整える「アロマオイルトリートメント」を行っています。
また、接骨部門ではスポーツの怪我のケアやトレーニング指導も行っています。

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Profile
HANA
イラストレーター
インターンシップでイラスト制作をしました。
コミュニケーションや人々とのかかわり方を、学んでいます。
Profile
運営者/編集者/ライター at 株式会社みのりの森

株式会社みのりの森 代表取締役
NPO法人Reframe 代表理事
凸凹じぶんなび とことこ 製作者/運営者/編集長/ライター
発達障がい専門誌きらり。 発行者/編集長/ライター
発達障害(ASD/ADHD)当事者
双極性障害当事者
発達障害の支援を中心に、会社を経営。
NPOでは不登校、発達障害、HSPなどの生きづらさを抱えた子どもと若者の居場所づくりをしている。

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