自分を知りたい―娘の決意―
ある朝、介護施設に就職して2か月目の娘が、「自分なんか生きていてもしかたがない」と大暴れをしました。その時の娘は、薄気味悪い笑みを浮かべ、正気ではありませんでした。
私は、「いよいよ限界か!」と思い、「辞めたらいい」と言いました。すると、すぐに正気に戻り、「アスペルガー(症候群)の検査をしたい、自分を知りたい、でも2、3万お金がかかるから、言い出せなかった」と言いました。
今思うと、たった1時間から2時間のやり取りでしたが、この短い時間に、これまでやってきた、心の勉強が活かせたと胸をなで下ろしました。この時に、かける言葉を間違えたら、今、娘は生きていないと思います。
娘が抱えてきた悩み
その後、娘は今後どのようにしていきたいか、ぽつりぽつり話してくれました。
「学生のころから同級生は簡単に出来てしまうことが自分には出来ない、人と違うと悩んでいた、就職し、それがはっきりした」とのこと。
「やる気はあるのに覚えられない」「言葉の理解が出来ない」「雑談が苦手」など。
私は、「よく話してくれたな、誰にも話せず苦しかっただろうに、よく自分から検査をしたいと言ってくれた」と安堵(あんど)しました。
そして、私は、娘のわずかな生きる意欲を消さないようにと、スマートホンで心療内科を調べ、市町村、民間の相談窓口も調べ連絡しまくりました。
娘は、退職し、少しホッとした様子でしたが、メンタルが不安定でしたので、心療内科探しを急ぎました。そして、少し離れていましたが、初診をすぐに受け入れてくれる病院を探しあてることが出来ました。
そこで、アスペルガー症候群の検査を受けました。
毎週、病院に行き、親は子供の成育歴の聞き取りがあり、娘は 2、3回に分けて検査を受けました。診断結果をもらうのに1か月以上かかったように思います。
「自閉症スペクトラム障害」との検査結果でした。
結果を受け入れ、前向きな日々を歩み始める
娘は、診断名がついてホッとしていました。
「これで手帳の申請が出来る、自分の生きにくさは、外見では分かってもらえないから、手帳を取得すれば証明になる」と新たな一歩を踏み始めました。
その後も、何度か悩むことはありましたが、常に娘は、自分が納得する選択をしてきたように思います。
その娘の選択を受け入れ、時には親としてサポートし、また、周りの方々の支援を受けながら、今、やっと、娘は自分のペースに合った働き方が出来て、イキイキと日々を送っています。
寄稿者 仲野
株式会社みのりの森 代表取締役
NPO法人Reframe 代表理事
凸凹じぶんなび とことこ 製作者/運営者/編集長/ライター
発達障がい専門誌きらり。 発行者/編集長/ライター
発達障害(ASD/ADHD)当事者
双極性障害当事者
発達障害の支援を中心に、会社を経営。
NPOでは不登校、発達障害、HSPなどの生きづらさを抱えた子どもと若者の居場所づくりをしている。