小児期発症流暢症:吃音ってなんだろう?
小児期発症流暢症(しょうにきはっしょうりゅうちょうしょう)は、吃音(きつおん)とも言われています。
英語では、Childhood-Onset Fluency Disorderと表記します。
吃音(きつおん)ってなんだろう?
吃音は発達障害の1つです。
「どもり」というと、ああ~!と思う方もいるかもしれません。
スムーズに話すことが苦手、言葉が出にくいなどのことからコミュニケーションが円滑になりにくく、困ってしまいやすいことが特徴です。
7~8割の人は自然に治っていくと言われています。
ですが、そこに入るまたは生きやすくなる為には、周囲が特性を理解して、「適切に関わること」や必要に応じて「トレーニング」することが大事なポイントとなります。
では、一緒に吃音の勉強をしてみましょう!
吃音は、子どもの語彙が爆発する頃に発見されやすい
子どもの時に吃音になると「小児期発症流暢症/小児期発症流暢障害」と診断されます。
特に2~4歳頃に発見されやすく、6歳頃までに発症すると言われています。
その理由は、2歳~2歳半くらいに見られる語彙数の急激な増加と2語文、3語文を使うようになり、友だちや大人と言葉を使ってやり取りをするようになると言われています。
この頃は、まだ言葉を覚えたてなので、上手く言えなかったり、思うように伝えられなかったりすることがあります。
そのような時に、不安になってしまったり、話し方を過度に注意されたり、周りにからかわれたりすることで、どんどん話しにくくなってくるとも言われますが、決して周りの接し方のせいではありませんので、身近に吃音の方がいても自分のせいだと思わないでくださいね。
小児期発症流暢症とは?
80~90%が6歳までに発症し、発症年齢の範囲は2~7歳と言われています。
典型例だと、最初の単語または長い単語の最初の音を繰り返し発音するといった症状から始まります。
発話の流暢性が失われる疾患で、音声・音節・単語・言い回しの不規則な速度・リズム・繰り返しなどの特徴が見られます。
その背景には、社交不安症や発達障がいを有している場合があるとも言われています。
3つの症状
吃音は、軽い言葉の繰り返しから始まり、大きく分けて3つの症状が現れていきます。
一番有名であり、見つけやすいのは連発と言われています。
3つすべて合わさっているなど、同時に複数の症状を持つ場合もあるそうです。
また、力をこめたり、身体を使って話したり、息を荒げたりなどの身体的な特徴も現れると言われています。
そして、これらの症状が変動ありで1年以上続いていることが吃音の診断基準になります。
先に話したように、波があることも吃音の特徴だからです。
連発
「ぼ、ぼ、ぼく」など、最初の言葉の音を繰り返す
(1回だけの繰り返しや言葉全体を2回ずつ言うことは吃音ではなくても起きます)
伸発
「ぼーーーーーーくは」と最初の言葉の音を伸ばす
(吃音特有の症状と言われています)
難発
「・・・・・・・・・・・・・・ぼくは」と最初の言葉が出にくい
(吃音ではなく言語発達の遅れで、言葉が出にくい場合もあります)
吃音の4つの特徴
- 斉読:歌,メトロノームなどでは生じにくい
- 波現象:月単位で症状が変わる
- 一貫性:吃音が生じやすい単語・行がある
- 適応:1度言えたら,そのあとは言いやすいことがある
原因はいまだ不明
吃音の原因は特定されていません。
様々な要因が考えらえますが、先ほどもお話ししたように、決して親御さんの育児方法や周囲の大人(保育園・幼稚園の先生含む)の接し方が原因ではありません。
考えられる要因としては・・・
- 体質的要因・・・子ども自身の身体の何かしらの特徴
- 発達的要因・・・身体、認知、言語、情緒が急激に変化する時期の影響
- 環境要因・・・・周囲の人との関係や生活上の出来事(ショックなこととか)
これらが合わさった場合が多いと言われています。
※特に10代後半以降に発症する吃音は、ストレスやショック体験、事故等による脳損傷などが原因と考えられます。
どれくらいの人がなるの?
吃音になる確率(発症率)は5%と言われています。
全人口と比べて(有病率)1%の人、つまり10~20人に1人が吃音ということになります。
日本特有のものではなく、国や言語は関係なく発症しています。
男女比は、4:1で男児に多いと言われていますが、幼児期に差はありません。
※男児の方が言葉の発達がゆっくりなので多いように見えるなどの諸説があります。
また、ご親族に吃音の方がいらっしゃる場合、発症率は3倍ほどあがりやすいようです。
臨床経過 ~ずっとお話することが苦手ではない!?
最初にお話ししたように、7~8割の人は自然に治ると言われています。
特に74%は発症4年以内に自然回復するとも言われています。
一方、8歳で吃音が顕著である場合は,思春期まで症状が続くことが多いです。
また、自然治癒しなかった場合は完全に治ることは難しいと言われています。
その間にも上手く話せるときもあるのが吃音の特徴です。
つまり、波があって周りからしたら「治った?」と思うこともあるのです。
特に緊張しやすい時(学芸会や発表会、インタビューなど)に起きやすいと言われています。
症状の進み方には段階がある
第1段階:発症直後の幼児
2~4歳で急に発症,連発が主な症状で自覚しにくい、気が付きにくい
第2段階:学童期
伸発が混ざって出てくる、吃音という不随伴運動を自覚するようになる
第3段階:思春期前半
難発が見られ、努力性の吃音と言われる時期
第4段階:思春期後半~成人期
吃音に対する不安が生まれ、会話を回避することや対人関係に影響を及ぼす
なかなか治りにくい要因は?
以下の要因があると、通常よりも少し治るまでに時間がかかりやすいと言われています。
- 家族にも吃音の方がいる(遺伝負因)
- 3歳半以降の発症
- 半年以上、上記に挙げた症状が続いている
- 男児(幼いころは性差があまりないとは言われますが)
- 構音障害や言語理解の障害がある
- 言語発達が進んでいる、または遅れている場合 など
吃音チェックリスト
上記に挙げた特徴を改めて表にまとめてみました。
2つ以上「はい」かつ、4の1年以上が「はい」の場合が吃音症の可能性がありますので、
支援を受けてみてくださいね。
1 | 初めの音や言葉の一部を何回か繰り返すことがある (「ぼ、ぼ、ぼく」など、最初の言葉の音を繰り返す) |
はい | いいえ |
2 | はじめの音を伸ばすことがある (「ぼーーーーーーく」など) |
はい | いいえ |
3 | 言いたいことがあるのに、出だしが遅くなる、力を込めてしまうことがある (「・・・・・・ぼく」「ぼ!く!ね!」など) |
はい | いいえ |
4 | それらの症状が、変動はあるが1年以上続いている | はい | いいえ |
支援方法
ポイントを4つまとめてみました。
1.正しく話すことを強制してはいけません
吃音は幼児期の発症で、小学校入学前後に自然または軽い指導でよくなっていきます。
大切なのは、本人が話しやすい環境設定です。
NG行為 ①どもった際に叱る
注意をすると『どもる=叱られる』となり、話さなくなってしまう可能性もあります。
場合によっては、それが他の障害(例えばうつ状態、パニック障害、選択性緘黙など)に繋がる場合もあります。
NG行為 ②話し方のアドバイスをする
大人からしたら一番してしまいやすいですよね。
でも途中で話を止めて、言い直させる、最後まで聞かずに注意をすることは、本人の自尊心を低くさせやすいです。
NG行為 ③説明を求める
「ちゃんと教えて」「何がいいたいの?」などの説明も求めることで、より話しにくくなる、上手く伝わっていないのかなと思ってしまうなどがあるかもしれません。
2.安心のできるような話しかけ方や雰囲気を作りましょう
先ほど、接し方のNGについてはお話ししましたね。
幼児期のお子さんは特に純粋です。
その為、幼稚園や保育園で「話し方、変!」とからかわれることや
「ぼ、ぼ、ぼく!だって~」などと面白いと思ってまねをされることもあるでしょう。
OK行為 ①最後まで話を聞く
大人はもちろん最後まで聞き、復唱(オウム返し)したり、簡潔にまとめてあげたりなど、ちゃんと伝わったよということを伝えてあげましょう。
また、子どもたちだけで最後まで聞くことに気が付くことは難しいので、周りの大人が「最後まで聞こうね」などと伝えましょう。
OK行為 ②聞く際に暖かく見守る雰囲気を作りましょう
本人が上手く話せるように、大人も「ゆっくり」「のんびり」とした話し方を心掛け、同じ時間(話すスピード)を共有できるようにしたいです。
OK行為 ③じっくり関われる時間を用意しましょう
短い時間で大丈夫なので、毎日の生活の中に、大人と一対一でじっくり関われる時間があると、お子さんも過ごしやすいと思われます。
3.緊張しやすい・どもりやすい場面を知る
上記の支援をしやすくするためにも、本人がどんな時に困りやすいのか気が付いてサポートしましょう。
特に本読みや劇、号令、 自己紹介、電話など特定の置き換えられない言葉を言う場面で困りやすいと言われていますので、改めて様子を見てみてくださいね。
4.自信を持って過ごせるような環境作りをしましょう
吃音のように話すことが苦手な子にも、他に出来る素敵なことがあります。
例えば、絵が上手だったり、お片付けが早かったり、笑顔が可愛かったり、物知りの虫博士だったり、走るのが早かったり、やさしかったりなど色んな面がありますよね。
その子自身が輝ける場所を作ることで、自信を持つ機会や成功体験が増え、話せるようになってくる場合もありますし、二次障害(うつ病、不安障害など)を防ぐことにも繋がります。
吃音のある人の就職
どんな仕事があっているのか?
吃音でも雇ってもらえるのか?
吃音をカミングアウトした方がいいのか?
カミングアウトをするならいつがいいのか?
などと、色々と悩みが出てくると思います。
吃音の有名人・芸能人の方もいらっしゃり、中にはアナウンサーや女優、声優をやっている方もいます。
なので、職業選択の幅を「吃音」を理由に狭めずに、やってみたいことをどういう風にやっていくか考え、しっかりと調べることが大事になると思います。
カミングアウトはできた方が、配慮した部署配属や仕事をもらえる、必要以上の注意を受けないで済むなどのメリットがあります。
一方で、相手(会社)によっては、嫌なことを言われたりすることもあるかもしれません。
出来る限り理解してくれる会社に出会うためにも、カミングアウトは面接の時の自己紹介で言えることが緊張するかもしれませんが、一番伝わりやすい可能性があります。
これらの練習もカウンセリングなどで行う場合もあるので、主治医やその他の専門家に相談してみることもお勧めします。
また、実際に就労した場合
プレゼンなどの話すような場面よりも「伝えること」を重視して企画書の作成をするとか、サポート的な役割から始めて慣れていくのも一つの方法と思われます。
PowerPointの見せ方を工夫したり、営業についた場合は、資料に力を入れたり、話す以外の工夫できる点は、まだまだたくさんあると思います。
専門家にも頼りましょう!
過ごしやすくする為の全ての責任を、親御さんや園の先生が担う必要はありません。
医療機関で診察や心理検査を受けたり、言語聴覚士さんとお話の練習(言語療法にも様々な種類があります)をしてみたり、情緒面の要因が多きそうであれば臨床心理士との面接(プレイセラピーや認知行動療法など)もあります。
市区町村の発達センターなどで発達相談を定期的に受ける、療育センターや民間の療育施設で個別に対応してもらう機会があるのもよいでしょう。
本人も周囲の人も一人で抱え込まないことが大切です。