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努力不足?わがまま?サボり?!注意欠如・多動症(ADHD)はちがうんです

こんな失敗、したことありませんか?

「重要な会議の前日の夜に、ついついゲームに夢中になって、気がついたら夜明け。睡眠不足で会議に出て、居眠りしてしまった……」

「たくさんの人が食事しているレストランで、友達とおしゃべりをしていたのだけれど 、周りのテーブルから聞こえる声が気になって、友達の話がぜんぜん聞こえない……」

「自分の部屋が足の踏み場もないくらい散らかっていて、図書館で借りていた本がいくら探しても出てこない。めんどうになって、貸出期間を3か月も超過してしまった……」

「英会話の勉強を始めたのだけれ ど、10日間でやめてしまった。その前はパソコン教室に通っていたけれど、これも1週間しか続かなかった。その前は……」

「人と会話しているとき、自分の話をするタイミングがわからず、人の発言をさえぎってしまうことが多い。話の内容も、あちらこちらに脱線。とりとめなく話してしまう。そのために、人から怒られたり、嫌われたりする ……」

誰でもいちどならず、こういった状況に陥って、困ったことがあるのではないでしょうか。
ものごとに熱中して用事がおろそかになったり、
騒がしい場所で集中力が散漫になったり、
片付けが苦手で大事なものをなくしたり、
継続して何かに取り組むことができなかったり……。

「いや、私はいちどもそのようなミスをしたことがない」と
胸を張って言える人なんて、
ひとりもいないのではないでしょうか。

ささいな間違いから、思い出しただけで冷や汗がでるような大失敗まで、
人間は誰でもじつにいろいろなミスをします。
ミスをしない人なんていないのです。
しかしながら、人それぞれの特性の違いから、
ほかの人よりちょっとだけ忘れ物が多かったり、
あれこれと色々なことに手を出してしまったり、
約束や時間を守ることをむずかしく 感じたりする人がいます。

 ADHDってなんだろう?

「不注意」「多動性」「衝動性」といった特性が、少なくとも6ヶ月以上継続しつつ、
その症状が12歳以前から見受けられ、かつ現在も生活に支障がある場合、
専門の医療機関による検査を経て、
発達障害のうちの「注意欠如・多動症(ADHD)」と診断されます。

注意欠如とは、
「活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めない」
といったことを言います。

また、多動性とは、
「じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまう」などの、
衝動的な行動が強く出てしまうことを指します。

これらは、脳の機能のなんらかのかげんで起こると考えられています 。
解明されていないことも多いのですが、
大脳にある前頭葉などの機能バランスの崩れや、
ドーパミン・ノルアドレナリンといった神経伝達物質の機能障害、
さらに遺伝的要因が関連しているとされ、
日々、研究が進められています。

ADHDを持っている人は、
スケジュールのやりくりや集中力のコントロール、持ち物の整理を苦手とすることが多々あります。
程度はさまざまです。
どこからが「ふつうの人」で、どの程度時間を守れないとADHDなのか、それを決める基準はありません。
しかし、ADHDの人は、出社時間に毎日遅れてしまう、銀行届出印を紛失してしまう、会議で他の人の話が頭に入ってこない、など、しばしば困りごとに出くわしています。

3つの特性

では、あらためて、ADHDの特性である、
「不注意」「多動性」「衝動性」について、詳しく見てゆきましょう。
NCNP病院 国立精神・神経医療研究センターのホームページにて、これらの特徴についてのシンプルな例があげられています。

不注意

  • 学業・仕事中に不注意な間違いが多い
  • 課題や遊びの活動中に、注意を持続することが出来ない
  • 直接話しかけると聞いていないように見える
  • 指示に従えず、業務をやり遂げることが出来ない
  • 課題や活動を順序立てることがむずかしい
  • 精神的努力の持続を要する課題を避ける、いやいや行う
  • なくし物が多い
  • 他の刺激によって気が散りやすい
  • 日々の活動の中で忘れっぽい

引用元:NCNP病院 国立精神・神経医療研究センターのホームページ

「重要な会議の前日の夜に、ついついゲームに夢中になって、気がついたら夜明け。睡眠不足で会議に出て、居眠りしてしまった……」というのは、ゲームによる余暇活動に時間を使いすぎたため、睡眠、会社の会議という活動がおろそかになってしまったということです。
これは、言い換えれば「課題や活動を順序立てることがむずかしい」ということです。

「たくさんの人が食事しているレストランで、友達とおしゃべりをしていたのだけれど 、周りのテーブルから聞こえる声が気になって、友達の話がぜんぜん聞こえない……」については、「他の刺激によって気が散りやすい」ということに当てはまりそうです。

「自分の部屋が足の踏み場もないくらい散らかっていて、図書館で借りていた本がいくら探しても出てこない。めんどうになって、貸出期間を3か月も超過してしまった……」というケースでは、「なくし物が多い」にくわえ、決められた返却期限に本を返すことができなかったのですから、「指示に従えず、業務をやり遂げることが出来ない」という要素もありそうです。

このように、「不注意」とは、なにかひとつのことを筋道立てて行うことがむずかしい、あるいは、ひとつのことに意識を集中することが難しく、そのために忘れ物をしたり、スケジュールが守れない、という特性です。

多動・衝動性

  • 手足をそわそわ動かしたり、いすの上でもじもじする
  • 授業中に席を離れる
  • 不適切な状況で走り回ったり高いところに登ったりする
  • 静かに遊べない
  • まるでエンジンで動かされているように行動する
  • しゃべりすぎる
  • 質問が終わる前に出し抜けに答えてしまう
  • 順番を待てない
  • 他人の邪魔をする

引用元:NCNP病院 国立精神・神経医療研究センターのホームページ

多動性と 衝動性については、セットで語られることが多いようです。
「英会話の勉強を始めたのだけれ ど、10日間でやめてしまった。その前はパソコン教室に通っていたけれど、これも1週間しか続かなかった」という場合、ADHDの特性を持った人は、衝動的に、まるでエンジンで動かされているように、習い事に没頭します。
新しいものごとを始めるときの行動力は、目を見張るものがあります。
ただし、ひとつのことに集中していられる期間は短く、さらなる衝動のもとに、他の習い事を始めてしまう。
あれやこれやとたくさんのことに手を出して、それをとっかえひっかえしているのが、ADHDの特性のうちの、衝動性と多動性を併せ持った状態です。

また、「人と会話しているとき、自分の話をするタイミングがわからず、人の発言をさえぎってしまうことが多い。
話の内容も、あちらこちらに脱線。とりとめなく話してしまう。
そのために、人から怒られたり、嫌われたりする ……」というケースも、頭のなかに思い浮かんだ様々な出来事を、のべつまくなしに話さずにはいられない、という、多動性、衝動性が強く出ている状態です。
こういった特性が強いと、本人に悪気はなくても周囲の人とのいざこざを起こしてしまいがちです。

のび太型とジャイアン

ADHDという概念は、多種多様な特性を包括しています。
ひとことにADHDと言っても、その人その人で困っていることは異なります。
ある人は、遅刻はしないけど忘れ物が多い、また別の人は、忘れ物はしないけど集中してデスクに向かうことがむずかしい、など、さまざまです。
「ドラえもん」の登場人物である「のび太」と「ジャイアン」の性格は、正反対のように思いますが、ふたりの性格が、ADHD的な特性を別々に示しているのでは、と考えている精神科医もいます。

もちろん、のび太とジャイアンがADHDと診断されたわけではありません。
しかし、のび太のうっかりしていて、計画性がなく、忘れ物が多い性格は、不注意型のADHDの特性が色濃く出ています。
他方、ジャイアンの衝動的で落ち着きのない行動、ルールや順番を守れない性格は、ADHDの多動性、衝動性の特性とされているものです。
一見すると好対照なキャラクターののび太とジャイアンが、ともにADHD的な特性を持っているのです。

努力が足りない?サボりなの?

ADHDの特性は、どこまでが自分の心がけで緩和できるものなのか、本人の努力ではどうにもならないのか、はっきりとわ かるものではありません。
ADHDの特性で困っている人は、周りの人から「努力が足りない」とか「サボっている」、「生意気だ」といった 指摘を受けることがあります。
それを気に病んで、元気をなくしたり、他の人とかかわることが怖くなって しまったりすることもあります。
このような、ADHDに関連しておこる二次障害が、心をむしばむ深刻なケースに発展してしまうことも多いのです。

近年にいたるまで、ADHDという概念は、一般の人にはあまり知られていませんでした。
家族や職場にADHDの特性を持った人がいても、怠けぐせのある人、わがままな人、というふうに理解されるに留まっていました。
しかしながら、最近では徐々にADHDという言葉の認知度が上がってきています。
多くの人がADHDという言葉を、なんとなく聞いたことがあり、それが怠けやわがままではない、ということも理解されつつあります。

特性を生かす

 ここまでで、ADHDの特性による日常生活での困りごとについての話をしましたが、
じつは、ADHDの特性は、自分の武器となることもあります。
社会のルールやスケジュールに従うことを苦手とする反面、社会のルールに対して批評的な目線をもつことを可能にします。
この目線のおかげで、多くの人が無意識に従っているルールに、なんらかの問題を発見して修正を加えたり、より洗練された合理的なルールを発明したりする 可能性すらあります。

また、衝動的な行動は、仕事の上ではサンクコスト (回収できない投資資金)にとらわれない、的確で素早い決断を生む可能性があります。
もちろん、ADHDの特性を持っているから、仕事が速くて斬新な視点を持っている、というのは言い過ぎです。
ADHDであろうが、どんな障がいを持っていようが、その人の持つ能力を生かせる状況は、必ず作れるということです。

ADHDかな?と思ったら

自分ではコントロールできない注意力の乱れや多動性、衝動性があり、長期にわたって困っている方は、いちどADHDという言葉を思い出してみてください。
ADHDの特性を持っている場合、自分の努力だけではどうにもできないこともありますので、医療や福祉の力を借りるのがよいでしょう。
ADHDを含む発達障害の相談窓口は、全国各地にあります。

福祉サービスでは、子どもの心にかんする診療や、発達障害の特性を持っている大人の方への就労支援など、さまざまなサポートが受けられます。
また、障害者手帳、障害年金といった制度のほか、医療費負担が軽減され、比較的審査が通りやすい自立支援医療制度の活用なども検討するとよいかもしれません。

私は就労移行支援事業所という福祉サービスのスタッフをしています。
ここでは、ADHDをはじめ、さまざまな障害を持った方が、ご自身の特性や適性を把握し、生き生きと活躍できる職場を探すためのお手伝いをしています。
福祉サービスをつうじて、同じ特性を持った人々と出会い、交流することで心が安らぎ、勇気がわいてくるかもしれません。
すこし脱線しますが、障害者手帳があれば、映画館や美術館を安く利用することができます。映画や絵画が趣味の方には特におすすめいたします。

ADHDの治療

 ADHDに起因する困りごとは、服薬で緩和されることが多いので、お医者さんに相談することも重要です。
現在、ADHDの治療薬として頻繁に使われているものには、これらがあります。

  • コンサータ(メチルフェニデート製剤)
  • ストラテラ(アトモキセチン製剤)
  • インチュニブ(グアンファシン製剤)
  • ビバンセ(リスデキサンフェタミン製剤)

ただし、薬が効くのは、あくまで服薬を続けている間だけです。
ADHDの特性を根底から消滅させてしまうものではありません。
ゆえに、服薬で症状を緩和させながら、心理療法やコーチングなどを用いて、ADHDによってもたらされている困りごとについて、行動を見直したり、対策を練ったりすることも大切です。

私自身もADHDの特性を持っており、あれやこれやと色々なことに手を出してしまいがちです。
仕事をいくつもかけ持ちしながら、パソコン教室や絵画教室に通ったり、大学の公開講座に出たり、人からは勉強熱心だといわれることもありますが、ともすると疲労をためこんでしまいます。
日常生活に気がいかなくなって部屋にものが錯乱している、というようなことも日常茶飯事です。
私はかかりつけのお医者さんから「8割の力で動くように」とアドバイスを受けました。
やりたいことに100%の力を使うのではなく、ある程度の力で取り組むこと。
それを心がけて、スケジュールを詰め込みすぎないように気をつけています。
ゆとりをもって活動すると、忘れ物をしても、ミスをしても、リカバーする時間があります。
スケジュールにひっ迫され、クタクタに疲れることも徐々に減ってきました。8割の力で、ほどほどに活動すること。ぜひ意識してみてください。

困りごとを、自分ひとりで抱えながら生活をするのは、ときに非常につらいことです。
「なぜか他の人のように上手くいかない。それがずっと続いている。しんどい」
そのしんどさが、ピークになる前に、相談をしてみましょう。

ADHDとうまく付き合っていくためには、ご家族や周囲の理解やサポートが得られるに越したことはありません。
そのためにも、まずは自分と向き合い、自己理解を深められるよう、大人の方であれば当ホームページ内で紹介している「【無料チェックでわかる!】発達障害の凸凹タイプ・じぶんの凸凹に向いてる職業10」などを活用してみてはいかがでしょうか?
まずは自分のことを知る、それが大切です。ADHDの特性を持っている方には、私は過度の自助努力をおすすめめしません 。
むしろ他の人からの援助を受けて、薬の力も適度にかりて、ゆとりをもって、強みを生かしつつ、抱えている困りごとを少しずつ減らしてゆく、というやり方を伝えたく思っています。

Profile
岩崎友寛

就労移行支援事業所「ソース堺東・三国ヶ丘」スタッフ。
副業にてフリーランスのイベントディレクター。ADHDの当事者です。

Profile
山田実穂
編集者

2002年より15年間、芸術系の出版社に勤続し、後半は編集長を務める。
2007年、過労よりパニック障害とうつ状態を発症。
2018年、それらの症状がADHD(注意欠如・多動症)ではないかと疑い、グレーゾーンの診断を受ける。
現在はフリーランスの編集者・ライター。

Profile
角田智哉
監修者 at 福島県立矢吹病院 副院長

医師/精神保健指定医/精神神経学会専門医・認定医/てんかん学会専門医/臨床神経生理学会脳波専門医/日本医師会認定産業医/臨床心理士
現在は児童を中心に診察しています。主に、親子関係の交流に焦点を中心に対応しCAREやPCITなどを施行しています。児童中心のクリニックを開設予定。

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