【連載11】子どもの東洋医学「夜泣き」
はじめに
赤ちゃんが夜中に泣きだしてなかなか寝てくれない…
個人差はありますが、
だいたい生後半年~1歳半の間に起こりやすい子どもさんの「夜泣き」。
今回は、子育てにまつわる困りごととして
「夜泣き」をテーマに
東洋医学と鍼灸の観点からお話ししていきたいと思います。
「夜泣き」について
赤ちゃんが夜泣きをする原因については、
はっきりしたことはまだわかっていないようです。
しかしながら、下記のようなことが原因として考えられるのでは、と言われています。
① なんらかの不快感があるのを、泣いて訴えている
暑い・寒い、お腹が減っている、おむつが濡れている、
お肌がかゆい、鼻が詰まっている…など
赤ちゃんは不快感があっても言葉で伝えることができないので、
泣いて親御さんに伝えようとしていることがあります。
② 睡眠のリズムが安定していない
生まれてすぐの赤ちゃんは、
昼・夜の区別をする体内時計がまだできあがっていないため、
昼夜を問わず寝たり起きたりを繰り返します。
また、大人に比べて、浅い眠り(レム睡眠)と深い眠り(ノンレム睡眠)のサイクルが短いため、
まとまって寝ている時間が短くなります。
浅い眠り(レム睡眠)の割合も多いため、ふとしたことで目覚めやすくなっています。
③ 脳の情報処理が追いつかない
人は寝ている間にその日にあったことなどを脳の中で整理します。
赤ちゃんも、起きている間に受けた刺激などの情報を
脳の中で整理しながら情緒を発達させていきます。
しかしながら、起きているときに特に刺激的なことがあった、寝る直前に興奮してしまった、というときには、
脳内で情報の処理が追いつかず起きてしまうことがあります。
東洋医学的なみかた
「夜泣き」について、東洋医学ではいくつかのタイプにわけて考えることがあります。
(※発熱、中耳炎などの炎症など、なんらかの疾患があって夜泣きをする場合はここには含みません。)
① オナカや呼吸器が弱い・冷えているタイプ
特徴:
手やオナカが冷たい、食欲がない、風邪をひきやすい、軟便、うつ伏せが好き
② 熱がこもっているタイプ
特徴:
泣き声が大きい、睡眠中のカラダの動きが多い、尿が濃く量が少ない、
顔が赤い、便秘気味、明かりをみると夜泣きが激しくなる
③ カラダがまだ弱いタイプ
特徴:
泣き声に力がない、驚きやすい、疲れやすい、顔が白い、爪の下の皮膚が白い
④ 驚き・恐怖、イライラによるタイプ
特徴:
強い驚きや恐怖を感じる刺激を受けた、イライラが強い、涙が多い、
寝ていてもカラダがビクッとする、突然泣き出す、親御さんにしがみつく
⑤ 消化不良タイプ
特徴:
ミルクを飲む量・食べる量が多い、泣き声に力がある、昼夜を問わず泣く、
オナカを押さえられるのを嫌がる、嘔吐する、便秘気味、便の匂いが強い、便に未消化の食べ物が混ざる…など
冷えや消化不良などの原因がある場合は、
温めてあげる、授乳や食事の量を調整する、などの対応ができる場合もあります。
しかしながら、赤ちゃんは内臓の機能もまだ十分ではないため、ある程度の成長を待つ必要もあります。
「小児はり」について
以前のコラムでも紹介させていただいたことがありますが、
鍼灸には「小児はり」という、子どもさん向けの施術があります。
流派や鍼灸師によって様々な施術方法があり、
症状や年齢によっても異なりますが、
子どもさんの皮膚は大人に比べて敏感なので、
「小児はり」では、“刺さない鍼”を使用することが多いです。
鍼で皮膚を刺激することにより、
・自律神経の働きが整いやすくなる
・内臓の働きを助け、完成していない機能の成長をうながす
・成長に必要なホルモンを調整する
・脳への神経伝達を助ける
・免疫力をあげる
・血行を良くする
・情緒が安定する
…などといったことが期待できます。
夜泣きをはじめ、
イライラ、キーキー、おねしょ、胃腸が弱い、便秘、風邪をひきやすい、疲れやすい、喘息、アトピー
など、
お子さんの様々な不調に対して行われています。
また、古くから子どもさんの健康増進・発育促進のためにも行われてきました。
おわりに
子どもさんの夜泣きが続くと
お母さん・お父さんも睡眠時間が減ったり、イライラしてしまったり、
ご近所さんへの気遣いなどで神経をすり減らしたり…など、
親御さんも疲労やストレスが溜まってしまうことも多いと思います。
「夜泣きはいつかおさまるもの」と言われても、
いつまでも泣き止まない子どもさんと向き合うことに
心身ともに疲れてしまうこともあるかもしれません。
そんなとき、「小児はり」をひとつの選択肢にしていただいてはいかがでしょうか。
「小児はり」は、お子さんの不調が改善することで、
お母さん・お父さんのお疲れやストレスを減らすことにも貢献してくれます。
“子どもさんが笑顔になれば、お母さん・お父さんも笑顔になる。”
そんな笑顔のサイクルをつくるキッカケになれたらと思っています。
親御さんだけで悩まずに
ぜひ、お近くの鍼灸院に相談されてみてはいかがでしょうか。
参考:
尾崎朋文・山口創・米山榮.『実践 小児はり法 子どもの健やかな成長へのアプローチ』.医歯薬出版株式会社.2012年.
Familiy Dr.「赤ちゃんの夜泣き 原因と7つの対策」
エリエール「赤ちゃんの「夜泣き」原因と対処法」
ユニ・チャーム「赤ちゃんの睡眠時間 -まとまって寝るようになるのはいつ?」