【連載10】東洋医学コラム「胃の痛み」(病院で診断名のつかない胃の痛み)
はじめに
胃の痛みは、
感染症、炎症や潰瘍などの疾患のほか
食べ過ぎ、ストレス、自律神経の乱れ、もともと胃が弱い…など
様々な原因によって引き起こされます。
お子さんや大人でも、
ストレスで胃が痛くなったり、疲れると胃の調子が悪くなったりと、
胃に症状が出やすい方も多いのではないでしょうか。
今回は、病院では診断名のつかない胃の痛みについて、
東洋医学の観点からお話しをしていこうと思います。
東洋医学で考える 胃の痛みのタイプ
東洋医学で考える「胃の痛み」について、
以下の4つのタイプについてお話ししていきます(※)。
※病院で診断名のつかない胃の痛み。
※急性の痛み、感染症などは病院の受診が必要です。
〈胃の痛み 4つのタイプ〉
①冷えタイプ
●原因:
寒さ、冷たいものの飲食、生もの(生野菜、お刺身など)の食べ過ぎ
●症状の特徴:
冷えた後に急に痛くなる、冷えると更に痛くなり温めると楽になる
冷えにより、胃が不調になり痛みがでるタイプです。
冷えの原因は、気候やクーラーなどの外からのものもありますが、
冷たいものや生ものの飲食など、内側からくるものもあります。
ヘルシーな印象をもたれやすい生野菜サラダやお刺身も、
食べる量や体調によっては、カラダを冷やす原因になってしまう場合があります。
②食べ過ぎタイプ
●原因:
食べ過ぎ、消化不良
●症状の特徴:
胃が張る、胃を押さえると気持ちが悪い、ゲップがでやすい、口内炎がたくさんできる
食べたものが消化しきれずに胃が痛くなるタイプです。
噛む回数が少ない、早食いは食べ過ぎにつながるほか、消化不良も起こしやすくなります。
また、胃に熱がこもるもの(肉、油っぽいもの、辛いもの、アルコール など)の飲食で痛くなる場合もあります。
胃と口は繋がっていますので、口内炎がたくさんできる人もいます。
③ストレスタイプ
●原因:
ストレス、運動不足
●症状の特徴:
ストレスを感じると痛む、胃が張る、ゲップが出やすい、ひどくなると脇まで痛くなる
ストレスを感じると胃が痛くなるタイプです。
悩み過ぎることでも胃が痛む場合があります。
また、運動不足によりカラダの中の「気」が滞っても胃が痛くなることがあります。
胃の痛みのほかにも、肩こりやイライラ、生理痛などの悩みを抱えていることも多いです。
④胃弱・お疲れタイプ
●原因:
もともと胃が弱い、疲労、病後、加齢
●症状の特徴:
鈍い痛み、さすると楽になる、食欲がない、空腹時に痛い、食べると痛みが和らぐ、口内炎が少しできる
体質的に胃が弱く、痛みが出やすいタイプです。
また、疲れすぎや加齢、病気をしたあとの体力が落ちているときにも痛くなることがあります。
口内炎ができることもありますが、
②の「食べ過ぎタイプ」がたくさんできるのとは異なり、1~2個など少数できます。
胃の痛みのほかにも、疲れやすい、だるい、息切れがする、などの自覚症状がある場合もあります。
タイプ別セルフケア
①冷えタイプ
・おなかやカラダを温める
・おなかを冷やす飲食を控える
②食べ過ぎタイプ
・食事を控えめにする
・消化しにくいもの、辛いもの、油っぽいもの、アルコールを控えめにする
・よく噛んで食べるようにする
・ウォーキングなど手足を動かす運動をする
③ストレスタイプ
・カラダを動かす
・気分転換をする
・悩み過ぎないようにする
・深呼吸をする
・ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる
④胃弱・お疲れタイプ
・体力をつけようと思って無理にたくさん食べない
・よく嚙んで食べる
・ヨガやウォーキングなど手足を動かす軽い運動をする
・しっかり休養をとる
おわりに
胃の痛みは、食べたものや、食べ過ぎなどの食事の仕方によって起こることも多いです。
また、ストレスがカラダに影響を与えることはよく知られていますが、
東洋医学では、ココロがカラダの働きにも大きく影響を与えると考えます。
強いストレスを感じてイライラしたり、プレッシャーを感じたり、思い悩みすぎたり…
といったココロの状態が胃にも影響を与えます。
そして、手足を動かすことは胃腸の働きをうながすと考えます。
ヨガやウォーキングなどの適度な運動は、
胃腸を元気にするとともにストレス発散にも役立ちます。
日中にしっかりカラダを動かすことは、
内臓などカラダのなかのあらゆる働きに関係する“自律神経”のバランスも整えてくれます。
最近のお子さんは外で遊ぶことが少なくなり、
またコロナ禍での生活やオンラインで色々なことができる時代になり、
家の中で過ごすことも多くなっています。
カラダを動かさないとストレスも発散できませんし、
胃腸の働きも滞ってしまいます。
“起立性調整障害”と言われているお子さんのなかには、
毎朝オナカが痛くなって学校に行けない子もいます。
起立性調整障害は、
小学校高学年~中学生に多くみられます。
自律神経の働きの不調により、
朝起きられない、毎朝胃が痛くなる、すぐに下痢してしまう、長時間立っていられない…
といった様々な症状がでます。
朝起きられないことや胃の痛み、トイレの心配などから
学校に行けないことが続き、不登校になってしまうこともあります。
自律神経の働きを整えるためには、
朝に太陽の光を浴びる、規則正しい生活をする、などの生活習慣の改善も必要です。
また、自律神経の不調のほかにも、
ストレスや運動不足、胃の弱さ、疲労、食事などが原因で胃が痛くなる場合は、
それぞれのタイプに必要なケアをすることで胃の痛みを改善・予防することができるようになります。
鍼灸や漢方などは、ひとりひとりの症状に合わせた施術・処方を行うため、試してみるのもお勧めです。
自律神経に関するアプローチとしても力になってくれます。
胃の痛みなどのカラダの不調が改善すると、学校に行けるようになるお子さんもいます。
不登校の原因は様々で複雑なこともありますが、カラダが元気になるとココロも元気になることもあります。
まずはカラダの不調を改善してあげることが、一歩を踏み出す助けになってくれるかもしれません。
参考URL:
一般社団法人 起立性調節障害改善協会「起立性調節障害による胃痛」
恩賜財団 済生会「子どもに起こりやすい起立性調節障害」