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【連載7】東洋医学で考えるアトピー性皮膚炎

はじめに

今回はアトピー性皮膚炎についてお話ししたいと思います。

アトピー性皮膚炎は、子どもでも大人でもなる皮膚の病気です。
強い皮膚の痒みのために、勉強や仕事に集中できなかったり、夜眠れなくなったり、それらがストレスとなりイライラしやすくなることもあります。
また、皮膚が赤くなったり、ジュクジュクしたり、カサカサしたり、皮膚が硬くなったり剥がれ落ちたりすることもあるため、見た目が気になってココロにも負担がかかることが多いです。

アトピー性皮膚炎はアレルギーの一種で、食物アレルギーやゼンソクとも関係が深いと言われています。
また、発達障害やウツなどの精神疾患とアトピー性皮膚炎の関連についても研究がされています。

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎は、痒みのある湿疹が、悪くなったり良くなったりを繰り返す皮膚の病気です。
赤ちゃんや子どもの時期に発症することが多いですが、小さい頃に発症してから大人になっても治らない場合や、大人になってから発症する場合もあります。

原因としては、

・もともと体質的にアトピーになりやすい傾向(「アトピー素因(そいん)」)がある
・アレルギー反応を起こす免疫物質(IgE抗体)を作りやすい
・遺伝的に痒みのもととなる物質(ヒスタミン)を分解しづらい

といったことが医学的に考えられています。

以前は、小さい頃にアトピーになっても5歳くらいまでに自然に治る人が多かったですが、
最近は、大人になっても治らない人や大人になってから発症する人が増えてきています。

その背景には、食事や生活環境の変化があるのではと言われています。

東洋医学で考えるアトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎に対して、
東洋医学では、

①カラダに熱がこもっていないか
②カラダのなかに余分な水分である「湿(しつ)」が溜まっていないか
③抵抗力が弱っていないか
④血流が悪くなっていないか
⑤胃腸が弱っていないか
⑥ストレスなどにより気の巡りが悪くなっていないか

…といったことをふまえて施術をしていきます。
(※鍼灸の考え方や施術は、流派や施術者によって多様性があります。)

アトピー性皮膚炎の原因として、
もともとの体質による影響は大きいですが、食事や生活習慣も重視します。

カラダに熱がこもる原因

  • 熱がこもりやすいもの(辛いもの、油もの、お肉、アルコール、味の濃いもの、など)の摂り過ぎ
  • 食べ過ぎ
  • 汗をかけず熱が発散できない
  • ストレスを感じることが多く、発散できていない
  • 睡眠不足(カラダの熱を冷ます機能が働きにくくなります)

…など

カラダのなかに余分な水分(「湿」)が溜まる原因

  • 「湿」を溜め込みやすくするもの(甘いもの、油もの、乳製品、生もの、冷たいもの、アルコール、味の濃いもの、など)の摂り過ぎ
  • 食べ過ぎ
  • 水分代謝がうまくできていない
  • 胃腸が弱い
  • 思い悩むことが多い

…など

抵抗力を弱らせる原因・血流を悪くする原因

  • 冷え、低体温
  • 過労、休養不足
  • ストレス
  • 食事や生活リズムの乱れ
  • 運動不足
  • 腸内環境の悪化

…など

胃腸を弱らせる原因

  • 食事の乱れ、食べ過ぎ
  • 水分や冷たいものの摂り過ぎ
  • 冷え
  • 過労、休養不足
  • 運動不足
  • ストレス
  • 思い悩むことが多い
  • 湿度が高い

…など

 

鍼灸では、
その人によって体質や症状の出方、原因と考えられることが異なりますので、
お話を聴いて状態を確認しながら、
余分な熱や水分を調整したり、弱っているところを助けたりするような施術を行います。

それとともに、
患者さん自身に食事や生活の改善ポイントを見直してもらうことがとても大切です。

アトピー改善のために大切なこと

食事に気をつける

〈避けたいもの〉
辛いもの、油もの、お肉、アルコール、味の濃いもの、
甘いもの、乳製品、生もの、小麦製品(腸内環境を悪化させやすい) など

〈積極的に食べたいもの〉
野菜、海藻、豆製品、ハトムギ、ゴマ、
発酵食品(乳製品は避ける)、青魚、キノコ類 など

※腸内の状態によっては、発酵食品や青魚を食べるとかえって症状が悪化する場合があります。
食べたあとに症状が悪化する場合には避けるようにしてください。

◆小麦について
小麦に含まれる「グルテン」が、腸内環境を悪化させ、アトピーも悪化させやすくします。
小麦アレルギーではなくても、小麦製品はなるべく控えましょう。
主食はパンや麺類よりも、お米や米粉を使ったものを選びましょう。

◆油について
油は本来人間の体に必要な栄養素ですが、
種類によって、“摂らない方が良い油”・“減らしたほうが良い油”・“積極的に摂ったほうが良い油”があります。

  • 摂らない方が良い油 … マーガリン、ショートニング
  • 減らしたほうが良い油 … サラダ油、コーン油、ヒマワリ油、ゴマ油、大豆油、バター、マヨネーズ
  • 積極的に摂ったほうが良い油 … エゴマ油、アマニ油、フィッシュ油

カラダを休める・ストレスケアをする

  • 睡眠不足にならないようにする(痒みで眠れない場合は、痒いところを冷やしてからステロイドを塗る、頭が痒い場合は水枕を使用する、などの工夫をしてなるべく眠れるように)
  • 夜に睡眠をしっかりとる(夜10~2時の時間帯に寝られるとカラダが回復しやすくなります、なるべく0時までには寝られると良いです)
  • 軽い運動をする
  • 気分転換をする

汗をかく・適切なスキンケアをする

  • 体力に合わせて、じんわり汗をかくような運動をする
  • 汗をかけるようにする(冷房の使い過ぎは、汗がかけなくなりやすいので要注意!)
  • 汗をかいた後はこまめに拭く
  • 皮膚を清潔にする(こまめにシャワーを浴びる、石鹸やシャンプーが残らないようよく洗い流す)
  • ぬるめのお風呂に浸かり血行を良くする(熱すぎると痒みの原因に、38℃くらいのお湯に体調に合わせて体が温まるまで浸かる)
  • 刺激になりにくい衣類を選ぶ(できるだけ化学繊維ではなく綿製品を選ぶ、など)
  • 化学製品の使用を減らす(柔軟剤、掃除溶剤の使い過ぎに注意、アレルギーのもとになります)
  • こまめに掃除をしてアレルギーのもと(ほこり・ダニ・ノミなど)を減らす
  • 保湿をしっかりして皮膚を守る(潤す+油分で保護する)
  • ステロイド剤を適切に使う

◆ ステロイド剤について
副作用を恐れて敬遠される方も多いですが、痒みがひどい場合には塗った方が悪化を防いでくれます。
痒みで皮膚をひっかいてしまうことや、痒みによる睡眠不足・ストレスは、症状を悪化させます。
しかし、ステロイド剤は痒みを抑えてはくれますが、繰り返し症状が出る場合には根本的には治っていません。
食事や生活の見直しと健康管理をしていくことが必要です。

おわりに

アトピー性皮膚炎は、そのつらい痒みから勉強や仕事・日常生活への影響も大きく、イライラしてしまうことも多いでしょう。
スキンケア・薬を塗る手間・食事や生活の制約…など、さまざまな苦労も伴います。

また、皮膚という目に見えるところに症状が現れることから、
人と関わることが苦手になってしまったり、自分を肯定することができなくなってしまったり、気持ちが落ち込んでウツになってしまうこともあります。

しかしながら、アトピーは、本来カラダが自分を守ろうとする働きが過剰になってしまったために起こる症状です。
体質や遺伝的にアトピーになりやすいということはありますが、
そこへアトピーを発症させる要因(カラダに負担をかける食事や生活、過労、ストレス…など)が重なって皮膚の症状として現れてきます。

これは、カラダからのメッセージです。

「カラダが喜ぶ食事や生活ができているか?」
「必要な休養とって自分のカラダをいたわれているか?」
「ストレスとうまくつきあえているか?」

カラダからのメッセージに耳を傾けて、
それらを見直すことは、アトピーの症状を改善することだけではなく
カラダとココロ全体の健やかさにもつながっていきます。

「一病息災(いちびょうそくさい)」という言葉があります。

“病気がない人よりも、なんらかの症状がある人の方が健康に気をつけて長生きする”
という意味です。

なお、アトピーの痒みを引き起こす「ヒスタミン」という物質は、
脳内で働くと記憶などの働きを活性化するという研究もされています。

アトピーになりやすい人は、もともと記憶力に優れ頭の回転が速い傾向がある、とも言われています。

アトピーの症状はつらいですが、
アトピーと上手に付き合うことで得られるものもたくさんあるはずです。

このコラムのなかの何か一つでも、
アトピーに悩む皆さんのカラダとココロの健康のために
参考になることがあれば幸いです。

〈参考文献・URL〉
アレルギーポータル.「アトピー性皮膚炎について
厚生労働省.「アトピー性皮膚炎の概要と基本的治療
独立行政法人 環境再生保全機構.「喘息悪化予防のための小児アトピー性皮膚炎ハンドブック」.
ふくずみアレルギー科.「発達障害の治療について」.
野村 洋.「失われた記憶の想起を回復させるヒスタミンシグナル」.日本薬理学雑誌.2021.156巻5号. p. 292-296.
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター (NCNP).「幼少期のアトピー性皮膚炎が思春期の精神疾患を誘導 ~動物実験でその可能性を証明~」.2020.
本間良子・本間龍介.『最新の遺伝子検査でわかったアトピーが消えるたった一つの方法』.2021.青春出版社.
※書籍紹介サイト: DIAMOND online.https://diamond.jp/articles/-/279518

Profile
菅原 美幸
ライター 鍼灸師 at ERP下鴨南治療院 接骨・鍼灸

学校法人森ノ宮医療学園
ERP下鴨南治療院 接骨・鍼灸
保有資格:鍼灸師、アロマセラピスト、健康美容食育士、ファスティングマイスター
一般社団法人 日本小児はり学会 会員
中医学にもとづいた鍼灸施術、食養生などのアドバイスも行っています。

ERP下鴨南治療院 接骨・鍼灸
鍼灸部門では、お体の「鍼灸施術」、お顔の「美容鍼」、子どもさんの「小児鍼」、経絡を整える「アロマオイルトリートメント」を行っています。
また、接骨部門ではスポーツの怪我のケアやトレーニング指導も行っています。

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運営者/編集者/ライター at 株式会社みのりの森

株式会社みのりの森 代表取締役
NPO法人Reframe 代表理事
凸凹じぶんなび とことこ 製作者/運営者/編集長/ライター
発達障がい専門誌きらり。 発行者/編集長/ライター
発達障害(ASD/ADHD)当事者
双極性障害当事者
発達障害の支援を中心に、会社を経営。
NPOでは不登校、発達障害、HSPなどの生きづらさを抱えた子どもと若者の居場所づくりをしている。

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