チック症、トゥレット症候群とは?
チックとは
チックとは、顔面や肩などの筋肉の不規則な動きや発声を、本人が意図せずに繰り返す状態を言います。
そしてチックには、「運動チック」と「音声チック」があります。
重症度はさまざまですが、幼児期の5人に1人に見られ、とくに男児は女児の3倍ほど多く現れるとされています。
大部分はある時期のみの一過性のものです。
・運動チック・・・まばたきや首ふりなどの日常的な動作を何度も繰り返してしまうこと
・音声チック・・・短い言葉やセキばらい、突然の大きな声、相手や自分の言った言葉を繰り返すこと
・トゥレット症候群・・・チック症の中でもっとも重症度の高いもの
いずれの場合も注意欠如・多動症(ADHD)、限局性学習症(SLD)、強迫性障害などと併存する場合があるので、注意が必要です。
チックは本人が意図的にしているものではなく、無理に止めようとすると短時間なら可能なこともありますが、その後、反動で大きくチックが起こります。
意識すれば一時的に止まることから、当事者本人のクセと誤解されることもあります。
チック症の原因
チック症の原因ははっきりと解明されていません。
家系内で多発する傾向が見られるため、遺伝的要因があるのではないかと考えられています。
神経伝達物質に作用する薬が症状の緩和に有効であることから、神経系に原因があるのではないかとも言われます。
また症状は不安や緊張、興奮や疲労などが誘因で起こりやすくなります。
不安などのストレスや強い疲労によって悪化しやすく、心身ともに落ち着いている時は改善する傾向があります。
なお睡眠中は起こりません。
そして運動チックには顔面から始まるという特徴があり、手足から始まることはありません。
チックの診断
チック症は症状と、その継続時間を考慮し、専門家による問診や視診などで診断されます。
てんかんなどの神経系の病気の可能性を取り除いたあと、症状と期間によって以下の通りに分類されます。
・一過性チック・・・運動チックおよび音声チックの両方またはいずれか一方の症状が、4週間以上1年未満持続する障害
・慢性チック・・・運動チックと音声チックのどちらか一方の症状が1年以上持続する障害
・トゥレット症候群・・・運動チックと音声チックの両方が1年以上続く障害
また、ADHDや強迫性障害との併存の有無を、同時に検査する場合もあります。
チックの治療
症状が軽度と判断された場合は薬物治療などを行わず、身体的心理的ストレスを減らす環境を整えます。
周囲がチックを直接的に指摘しないなどの配慮や特性の理解ができる状況の場合も、積極的な治療はしないことが多いです。
とは言え、症状や状況に応じて認知行動療法などが行われることもあります。
そして重症な場合、薬物療法が行われることがあります。
いくつかある薬の中から、併存している障害や副作用などを考慮し、医師が処方内容を決めます。
具体的な対策は以下の通りです。
環境を整える
当事者本人や家族、周囲の人々に症状の理解を促し、ストレスの緩和を目指します。
前述した症状を直接的に指摘することを避けてもらったり、症状が悪化した時に一人になれる場所を作ったりします。
認知行動療法
本人のものの考え方や受け取り方を変えることによりストレス緩和を目指す認知療法と、学習の法則を利用した行動療法を混ぜたような心理的治療のひとつです。
チックの代わりに、チックの言動と同時にはできない別の行動を学習させるハビット・リバーサル法(習慣逆転法)などが積極的に取り入れられています。
薬物療法
現在チック症に有効とされている薬の多くは抗精神病薬です。
ADHDが併存する場合、チックを増悪させる可能性のある薬もあるので注意が必要となります。
大人のチック
チックは一般的に幼児期から青年期までに発症し、20歳以上になってから症状が現れることは非常にまれです。
多くの場合、成長とともに改善、消失しますが、大人になっても症状が持続したり、再発したりするケースもあります。
大人になってはじめて症状が出た場合は、別の病気や後遺症、薬の副作用の可能性もありますので注意が必要です。
チック症の診察や治療は、主に小児科や小児神経科などで行っています。
大人になってはじめてチック症で病院を受診する場合は、精神科もしくは神経内科などに相談するのがよいでしょう。
トゥレット症候群
前の章でも少々触れていましたが、トゥレット症候群はチック症のなかでも、もっとも重症度の高い障害です。
病名はフランスの神経内科医、ジョルジュ・ジル・ド・ラ・トゥレットに由来しています。
多種類の運動チックに加え、ひとつまたはそれ以上の音声チックが1年以上続くと、それと診断されます。
多種類とは、まばたきや首ふりなどの症状が日や時間によって変わる、または同時にでることを指します。
トゥレット症の場合、障害者手帳を取得し、福祉サービスが利用できることがあります。
チックは発達障害者支援法の定義において「発達障害」と定義されていますので、医療支援や就労支援を受けることもできます。
まとめ
症状の軽重度に関わらず、当人や周囲で抱え込まないようにしましょう。
専門機関に相談したり、有用な制度を活用したりして、心配事や不安をすこしでも取り除くことができれば、症状の改善を目指しやすくなると思います。