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うつ病(抑うつ症候群)を知ろう

うつ病という病名は多くの方が知っているものかと思います。
しかし、どんな人がなりやすいか、どう治療をするのか、どう進行していくのかなど、詳しいことはまだまだ知られていないかなとも感じます。
今日は一緒に「うつ病」の勉強をしましょう!

うつ病ってなに?

うつ病は、通常の悲しみや憂鬱(ゆううつ)、気分が落ち込むこととは異なります。
何週間も何か月も何年にもかけて、ほぼ1日中憂鬱な状態になって、悲しみや空虚感を感じていることです。
睡眠や食欲に影響を与え、生活リズムが崩れてしまう、「自分なんて」などと自分が価値のない人間だと思ってしまうなど、生活にさまざまな支障をきたすと言われています。
中には自殺を考える方もいるため、この後お話しするように、誰もがなりやすいですが、症状の程度は人それぞれなので、安易(あんい)に考えていてはいけない病気です。

どれくらいの人がなる病気?

日本では2020年夏現在、厚生労働省の調査によると、過去12か月の間にうつ病になる人数は約50人に1人、障害でうつ病になり得る人は約15人に1人と言われています。
また、女性は男性の2倍くらい、うつ病になりやすいという統計が出ています。
男女差の原因は、思春期に起こる女性ホルモンの増加、妊娠・出産など女性に特有の危険因子や社会的役割の格差などが考えられています。
また、性別を問わずうつ病を経験する方は若年層と中高年層に多く、この二つの年齢層に心理的な負担がかかりやすいと言われています。
例えば、若年層であれば第二次性徴のような身体的要因がもたらす心の変化や、社会・学校・仲間・家族などさまざまな環境から影響を受ける時期であることが負荷をかけやすくすると言われています。
中高年層であれば仕事などの社会的役割の変化やライフイベント(結婚・妊娠・引っ越し・死別など)によるものが心理的負荷の要因の一つと言われているため、うつを経験しやすいと言われています。

うつ病をチェックしよう

うつ病は少なくとも2週間、以下の症状が5つ以上、毎日ある場合に診断されます。
下記の中で「抑うつ気分、または悲しみ」「これまで楽しめていた活動における興味または喜びの減退」のうち1つ以上が存在する必要があり、社会的または職業的等、日常生活に支障をきたす場合に診断されます。

  • 抑うつ気分(気分の落ち込み)、または悲しみの増加
  • これまで楽しめていた趣味などの活動への興味または喜びの減少
  • 突然に起こる体重の増加や減少、または食欲の変化
  • 不眠(眠ることが困難)、または過眠(寝すぎる)といった睡眠に関する症状
  • 落ち着かずに不安にかられている、もしくは会話の動きも遅くなる
  • 疲労感が増したりや気力がなくなり、なにもしたくない
  • 自分には価値がないと思う、または不必要に自分を責める
  • 集中ができない、自分で何かを決めることが難しい
  • 死や自殺についての反復思考、自殺計画、または自殺企図

うつ病になりやすい人(リスク要因)とは?

誰でもうつ病にかかると言われてもいますが、なる可能性の高い要因がいくつかあります。

①本人の気質
自尊心の低さ、ストレス耐性の弱さ、悲観的・マイナス思考の方。

②環境
暴力・DVを受ける、ネグレクト、虐待、低所得などの外的なストレスの多い子ども時代や出来事を経験した方。

③遺伝
近親者(両親や兄弟、子ども等)にうつ病の方がいる方。
その場合は、通常の2~4倍はリスクが高まると言われています。

④生物学的
脳内の科学物質が関係している可能性が高いとされています。
それらがどのようにうつ病を引き起こしているか、まだ原因は解明されていませんいが、主にセロトニンとノルアドレナリンの不足があると言われます。
現在、日本で認可されているうつ病の治療薬にはセロトニンやノルアドレナリンを補う効果があり、その服用によって回復している方がいることからすると、こうした神経伝達物質が何かしらの関連があると思われます。

うつ病の治療

精神疾患の中で、最も治療のしやすい病気と言われています。
治療に良く反応して、症状が和らぐ場合が多いのです。
軽度の場合は、精神療法で治療されることが多いですが、中等度から重度の場合には精神療法と薬物療法を合わせることがスタンダードです。
精神療法は、精神科医や臨床心理士などと対面式で行う場合と少人数のグループで行う場合があります。

うつ病の経過

うつ病になってから回復までにどれくらいの時間がかかり、どのように変化をしていくのかは皆さん気になりますよね?
言い方はさまざまですが、大きく分けて3つの過程があります。

急性期(前駆期)・・・6~12週間

これまで挙げたような症状が現れますが、うつ病の方は無理をしやすいタイプが多いため、最初は気が付かずに治療が遅れる場合があると言われています。
治療が開始されると、徐々にイライラや不安などの症状が弱まります。
薬を飲み始めるため、副作用に悩まされることもありますが、医師との相談のもと適切な処方量などを調整していく期間であり、身体にも薬に慣れてもらうための期間です。
治療効果は、即効性のあるものではなく、階段を一つ一つ上るような感覚と言われています。また、休養をもっとも大事にする時期です。

継続期(極期)・・・4~9か月

治療により安定した状態を大切にする期間です。
「良くなった」と安心して薬を飲む事を忘れたり、飲み忘れたり、仕事なども再び頑張りすぎてしまうことで、ぶり返しやすくもなる時期なので、医師と相談しながら慎重に治療を進めていくことが大切となります。

維持期(回復期)・・・1年~

少しずつ以前の生活に戻っていきます。
この頃から、うつ病を引き起こしやすい思考のパターンを修正するための精神療法に取り組み始める方も多いです。
この時期も服薬や環境調整は医師との相談が必須になります。

治りにくい要因

治りにくいうつ病を「難治性うつ病」と言います。
要因はさまざまですが、いくつか紹介します。

①医師など治療者の要因
薬物の選択や量、期間が適切ではない場合が考えられます。
それはうつ病と誤解されやすい病気が、ほかにもいくつかあることが一つの理由と言われています。

②本人の要因
自己判断で服薬や通院も中止した場合が考えられます。
うつになりやすい性格であることや、休息をとらない、対人関係の問題なども考えられます。

③環境要因
家庭や職場でのサポートの不足も治りにくい要因とされています。

これらの①~③が複雑に絡み合っている場合に「難治性うつ病」となりやすいと言われています。
①の場合は、セカンドオピニオン(かかりつけ医とは別の病院に行って違う視点で診察をしてもらうこと)を受けられることも方法の一つです。
②③の場合は、このあと紹介する精神療法(心理療法)を受けられることが方法の一つです。

難治性うつ病とは

一般的なうつ病の治療を行っても2~3割が難治化・遷延化するとも言われています。
そのため、難治性うつ病は稀(まれ)な疾患ではないです。うつ病が難治化する要因は、いくつかあります。

①うつ病を発症してから治療開始までの期間が長い
②身体疾患の合併や不安障害の合併がある
③アルコールや薬物依存
④高齢者
⑤ストレス要因解消が困難な場合
などが挙げられ、自殺のリスクが高いとも言われています

また、不安障害だけではなく双極性障害の場合も考えられます。
双極性障害は、躁鬱(そううつ)病とも呼ばれている疾患です。
躁(そう)状態とうつ状態が交互に起こります。
その軽度の躁状態を、うつ状態が改善されてきた、と本人や医師が見誤ることも多いため、セルフモニタリングや医師へ病状をしっかり伝えること、医師も丁寧な問診をすることが重要となります。

うつ病の薬物療法

うつ病の治療は、さまざまな薬が使われますが、メインは抗うつ薬です。
うつ病は、脳の一部の機能が正常に働いていないことにより症状が現れる病気と言われています。
その為、抗うつ薬を服用して、その正常に働いていない部分を補っていきます。

抗うつ薬は、5つに分類され、古いもの順に三環系➡四環系➡SSRI➡SNRI➡NaSSAです。
近年、主流になっているのはSSRIですが、選択的セロトニン再取り込み阻害薬の略称でして、主にセロトニンを補う役割を話します。

SSRIにも薬の種類があります。

  • ルボックス
  • パキシル
  • ジェイゾロフト
  • レクサプロ

うつ病の治療で行う精神療法の種類

①認知行動療法
思考や行動のパターンを見つけて変容させること
週間活動記録表、認知再構成法

②対人関係療法
人間関係や対人技能を向上することが目的

③支持的精神療法
問題解決やアドバイスをして、可能な限り高い機能水準を保ち、回復させることが目的

④家族療法・カップル療法
個人だけではなく、家族またはカップル内で起きている問題に対処すること

⑤集団療法
同じような疾患を持つ人たちと一緒に話したり、考えたりすること

精神療法には適応できる人となかなかできない人もいるため、受けたい精神療法を必ず受けられるとは限りません。医師や心理士などの判断によって決まります。
受けたい理由の他に、今の症状や生活状況を医師にきちんと話しましょう。

うつ病診断や生活に役立てるために行う心理検査

  • SDS(Self-rating Depression Scale/自己評価式抑うつ性尺度)
  • CES-D(The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale/抑うつ症状の自己評価尺度)
  • HAM-D(Hamilton Depression Rating Scale/ハミルトンうつ病評価尺度)
  • BDI-Ⅱ(Beck Depression Inventory-Second Edition/ベック抑うつ質問票)
  • バウテストなどの描画テスト(例えば患者に「実のなる木」を描いてもらい、その描き方や出来上がった絵から心理状態などを診ていくもの)➡(「木」などの指定された絵を描いてもらい、その絵から心理状態などを分析するもの)
  • ロールシャッハテスト(Rorschach test, Rorschach inkblot test/投影法に分類される性格検査の代表的な方法の一つ)  など

これらに加えて知能検査をされる方など、それぞれの状態に合わせたテストバッテリー(検査の組み合わせ)によって実施されます。

子どものうつ病

子どもの場合、多くは「学校に行けない」ということに影響していきます。
成人にも該当しますが、特に朝がつらく、起きることが難しく、起きられたとしても準備をして学校にいくことが難しい状態になりやすいと言われています。
きっかけとしては、友だちと喧嘩(けんか)したり、失恋したり、勉強が上手くいかなかったりなど、どんな人にでも起こり得る出来事が多く、それらによる落ち込みが何週間も続くと「うつ病」であることが考えられます。
また、発達障害の二次障害(発達障害の症状によって周囲から悪い評価を受けるなどを含む)として、うつ病になる子どももいます。

高齢者のうつ病

高齢者のうつ病は、認知症と誤診されることもあると言われています。
典型的なうつ症状がそろうことは少なく、一部が強く現れたり、反対に弱くなったりすると言われ、特に心気的な訴えが多く、記憶力の低下を気にする方も多いようです。
きっかけとしては、近親者との死別や周囲の病気、自身の病気などが多く、自殺企図や罪責感、引きこもりがちになってしまう症状が数週間続くと「うつ病」であることが考えられます。

本人や周囲ができること

これから紹介する方法はあくまでも典型的なものです。
同じうつ病でも身体疾患の有無や上記に挙げた以外の疾患との兼ね合いもありますし、睡眠症状や食欲の有無など、個人差があるため、全員があてはまるものではありません。
主治医と相談しつつ、適切な対策を取り入れていけるとよいと考えられます。

①まずは安心して休養できる環境を

うつ病の方にまず必要なことは【休養】です。
うつ病の方は頑張りすぎる傾向があり、その頑張りすぎに自身では気が付けない場合があります。
仕事をされている方は、休職をする。
主婦の方は、家事や育児を変わってもらう、など。
自分で休もうとするのではなくて、周囲の協力のもと、環境的にも休まざるを得ない状況になることがよいと言われています。
休養期間は症状や状態にもよりますが、だいたい1週間~1か月くらいです。
あまり長く休むと、元の生活に戻すことが難しくなる場合もあります。

②規則正しい生活

セロトニンは、うつ病のような脳に不足の状態だと薬で補う必要があります。
個人差はありますが、朝起きて太陽光(曇っていても太陽はあります!)を浴びることは出来たらいいなと思います。
というのも、うつ病ではない人も【太陽光】でセロトニンを補っているからです。
また、幸せな状態もセロトニンを増やす効果があると言われています。

朝食を含む食事も三食摂りたいものです。
朝食を食べていない方は、疲れやすいと言われています。
バナナやコーンフレークなど食べやすい物からでいいので、食べてみましょう。
インスタント食品やレトルト食品も便利ですが、コンビニやスーパーの出来合いの物を組み合わせるだけでも十分なので、少しでもバランスの良い食事をお勧めします。

睡眠は、最初の休養の時期(1週間ほど)でも1時間以上の昼寝は出来るだけ避けたいです。
それは、昼夜逆転のリスクがあり、今までの生活リズムに戻すことが大変になる場合があるからです。
特に、もともと仕事をされている方が休職中の場合には、やることがなくて寝てしまうことが多くなりがちです。
趣味でもいいですし、ちょっと脳トレのようなものを取り組んでみるとか運動などをやってみるなど、頭や体を日中に使って、少しでも働いている状態と同じような動きをすることで、復帰の時の反動が軽減されたり、質のいい睡眠につながったりします。

③話をする(聴く)またはそっとしておく

ご本人にとっては「話をする」ということも一つの治療法です。
うつ病の方は、自分で抱え込んだ結果、うつ病になっている場合が多い、「頑張り屋さん」がたくさんいます。
1人で抱え込まず、周囲に話してみましょう。

話しにくければ、すべてを話すのではなくて、家族にはこの話、友達にはこの話など分散させるのも一つの手段です。
また、カウンセリングなどの活用も方法の一つかと思われます。

ご家族や恋人は、気に掛けることと同時に心配しすぎないことも大切です。
このバランスは、うつ病の本人によるものなので難しいですが、話をひたすら聞いてほしいタイプの方もいれば、そっとしておいてほしい人もいます。
環境調整を手伝いながら、時折「調子はどう?」などと声をかけ、反応を見て、そっとしておく、または話を聴く、またはその両方を出来たらいいかなとも思います。

まとめ

これだけ書きましたが、うつ病は原因不明とも言われています。
「抑うつ気分、または悲しみ」「これまで楽しめていた活動における興味または喜びの減退」のどちらかでも感じられ、社会的または職業的等、日常生活に支障をきたす場合には、我慢(がまん)せずに、早めに病院へ行かれることをお勧めします。
治療が早ければ早いほど、薬の量を抑えられ、治療期間も短くなる可能性が出てきます。
自身のためにも、こころの病気の代表である「うつ病」を甘くみず、適切な治療を受けましょう。

参考:厚生労働省、医学書院『精神疾患・メンタルヘルスガイドブック』
Profile
池谷さき
ライター

臨床心理士
大学院卒業後、精神科病院、心療内科クリニック、児童発達支援事業所、放課後等デイサービス事業に勤務。
うつ病や双極性障害、不安障害の方のカウンセリングを経験。また、子どもから大人まで様々な発達障害の方の相談支援や心理検査を行ってきた。現在は療育の現場を中心に、オンライン含むカウンセリングや心理学系コラムの随筆、講師などの依頼も引き受けている。

Profile
山田実穂
編集者

2002年より15年間、芸術系の出版社に勤続し、後半は編集長を務める。
2007年、過労よりパニック障害とうつ状態を発症。
2018年、それらの症状がADHD(注意欠如・多動症)ではないかと疑い、グレーゾーンの診断を受ける。
現在はフリーランスの編集者・ライター。

Profile
角田智哉
監修者 at 福島県立矢吹病院 副院長

医師/精神保健指定医/精神神経学会専門医・認定医/てんかん学会専門医/臨床神経生理学会脳波専門医/日本医師会認定産業医/臨床心理士
現在は児童を中心に診察しています。主に、親子関係の交流に焦点を中心に対応しCAREやPCITなどを施行しています。児童中心のクリニックを開設予定。

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